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第26話 とある決心 ②

王城を右手に見ながら駅前ターミナルへと歩いていたら 『そこのチビ、待ぁ~てぇ~ぃっ!!』 と、切羽詰まった声がして ”?” チラリ振り向いて見たらそれは ―― 物凄い形相でこちらへ向かって全力疾走する ゲイブだった。 げっ?! 情報届くの早すぎでしょ! ってか”そこのチビ”って何なんだよ! ここで捕まっちゃ一巻の終わり。 俺も必死で逃げて。 客待ち中の馬車へ飛び乗った。 「とにかく出してっ!」 俺の慌てように驚いた御者が馬へムチを振るうと、 馬車はスタートダッシュで走り出した。 ゲイブも流石に馬車との追いかけっこには勝てなかった ようで、激しく息を切らし路肩で立ち止まった。 その姿が徐々に遠ざかって行く ――。 ”ごめん、ゲイブ。でも、決めた事だから。許して” これは、ゲイブへの言葉でもあり、 愛するエディへの言葉でもあった……。 ***  ***  *** 和葉が名簿抹消の申し出をしたという事は、 既にエディの耳にも入っていた。 エディはその連絡をゲイブから受けると、 人知れず公務の席を立ち、とある場所へと向かった。 エディやゲイブなど、優れた武人が乗りこなす 良く調教された馬なら約3万9千㌔の距離も たった小一時間で走り抜けるという、 稀代の名馬・アルタクスに乗って訪れたのは 国境間近の山岳地帯にある小さな祠の跡。 ここに祀られていた御神体は王都の王立寺院に 安置され、今あるのは祠の小さな建物だけだ。 和葉がこの世界へ飛ばされた時、 彼はココに倒れ気を失っていたのだ。  当時エディは国境警備隊の指揮に当たっており、 野営の準備をする為、この祠の井戸から水を汲みに 来て、和葉を見つけた。 その和葉の寝顔が月明かりに照らされる ――。 漆黒の闇を思わせる艶やかな黒髪が、 反射してキラキラ光る。 それは、それは、息を呑むほど美しかった……。 ひと目で魅了された。 手に入れる事は既に確定事項で。 当初は正室候補などにして、他人の目に触れさせる つもりは毛頭なく。 寵姫にし、一生自分の傍に置いておくつもりだった。 それがどうゆうワケか……あれよあれよという間に 正室候補者となり・王立アカデミーへも編入学し、 その隠された才覚をゆっくり開花させ。 半年後にはびっくりするくらい、魅力的な青年になった そして、余計に和葉が手放せなくなった。 しかし、今回和葉が宮廷へ自ら申し出た事を 真摯に受け止め。 エディはここへ来て、ある決断を固めた。 どのくらいここで過去の ―― 和葉と出逢ったばかりの頃の思い出に 浸っていた、だろう……エディはこちらへ近づいてくる 早馬の蹄の音で現実に戻った。 やって来たのは、ゲイブだ。 「……閣下、御前会議の招集がかかりました」 「……」

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