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第1話

みしりと腕がきしむ。 「……馬鹿力」 「お前が逃げるからだろう?」 ミシリ、キシリ、ときしむのを無視して笑う。あぁ、なんて愚かでなんて愛しいのか。 「ばぁか。今すぐ俺を奪えよ」 ほら、今すぐにな。 ネコのお前の方が、男前なんだ。 「「マジで今すぐ」」 笑いあって噛みつくようなキスをした。 しかし、こんなプロレスごっこみたいなセックス、本気でお前は気持ち良いのか? キスしながらもクスクス笑う、その姿は堪らなく可愛らしいが。 「んっ……ふうっ」 微笑みながらのキスに疑問を感じて、お前の柔らかな唇に激しく喰らいつく。 俺がお前を奪っても、お前はすぐに逃げるのでは? なぁんか、馬鹿な事考えてるんだろうなぁ。 思わずクスクスと笑いながらキスを甘受する。 「ん……ふ……」 甘く口腔を蹂躙するその舌をあまがみする。 「なに考えてんだ?」 まったく。と笑えば苦い表情をするお前。またネガティブなのか? 悔しい、悔しい、悔しい。 湧き立つ負の感情から、激しく舌を突っ込んで、口内を掻き回す。 俺がお前を捕まえたって、時間が経てばまた逃げる。結局、俺はお前を奪う事なんて……。 「なぁ、なに考えてんだよ?」 お前は笑う。最高に愛らしいが、最高に憎らしい笑顔で。 「……おまえのこと」 だけど、と言葉を濁して笑う。 「……おまえは、俺を、どうしたいんだ?」 少し挑発めいた言葉。 ギラリと肉欲と、それ以外が混じった視線は俺を焼く。それすらも快楽だとは言ってやらない。

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