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「ごごごごめんなさい」
「勝手な真似しやがって、バカが」
そこは体育館棟にあるバスケ部専用のロッカールームだった。
壁際にロッカーがずらり、向かい側にはベンチ、こ、ここで女子が生着替えしてるのか……デヘヘ。
「てめぇ、人の話聞いてねぇだろ」
「ひっ」
「俺の妹がミスコンに出てるって言われたぞ」
「えっ」
「どうして佐藤って名乗ってんのか生徒に聞かれた」
「うっ」
あれか、ゴールデンウィークに映画館で会ったコ達か。
まさか顔覚えられてるなんて……。
「俺の妹だって知られたくなくて偽名使った、そう適当に誤魔化したけどな」
……あれ?
あれ、巽、ジャージじゃない!
ステージではおっかなくてずっとビクビク顔逸らしてたから気づかなかった。
普通にシャツ着て。
ネクタイして。
セーターで。
普通科目の先生っぽい!
「おい、聞いてんのか」
「巽さん、今日ジャージ着てない!」
「……」
「あ、あわわ、ごごごごめんなさい」
「今日は授業も練習もねぇんだよ、バカ佐藤」
何しにきたんだ、お前?
「巽さんが……どんな風に先生してんのかなぁ、って、興味あって……こっそり来ましたです、ごめんなさいです」
「暇人だな」
……ていうかですね、距離がですね、さっきから近いんです。
ロッカーに両手突いて、俺の逃げ場塞ぐみたいな感じで……。
「本当にバカだな、お前」
巽が低く笑う、ふにゃ、その笑い方好き、好き、なん、だけど……。
「巽さん、は、アレですか」
「アレ?」
「俺より、園ポンさんのが、好み、ですか」
そう。
巽、持ち票ぜーんぶ園ポンに入れたんだよなぁ。
「黒髪で、お嬢様っぽいコ、好み、ですか」
「妬いてんのか、コーイチ」
「ッ……妬いてねーもん! 怒ってんのなら俺もう帰るッ」
「勝手に帰んじゃねぇよ」
じゃあどーすりゃいーんですか、俺。
「優勝させるわけねぇだろ」
「ふぇ?」
「お前、ここに来て完全浮かれてただろ」
「……テヘヘ」
「テヘヘ、じゃねぇよ、そもそも最初に女装して潜入した動機も異性見たさの下心だろうが、そんなお前が優勝してみろ、ウチの生徒に囲まれて益々下心が増長するだろうが」
今日が文化祭だってことも教えなかったのに勝手に来やがって。
「俺は妬いたぞ、コーイチ」
まさかまさかのヤキモチ宣言に嬉しさの余り立ち尽くしていたら、ぶちゅって、キスされて。
唇とけそうなくらい攻められて、怖いくらいぞくぞくして、思わず巽にしがみついていたら。
女子高らしからぬ爆音の始まり。
体育館で三時からのライブがスタートした……。
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