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さっきからちょこちょこ話しかけてくんだよな、この人。
お店の人と知り合いみたいで、カウンター越しにおしゃべりしてた、常連さんってやつなのかな?
「もう一枚食べる?」
え!
食べたいけど! お金ないし!?
え、奢ってくれんの!?
「飲み物、なくなりそうだね、何かオススメの一杯、つくってもらう?」
え!
オススメの一杯! なにそれンまそう!
あっという間に残り一枚になったピザ、もっもっもっもっ、夢中で食べていた俺。
知らないおにーさんの甘々な言葉にうんうん頷こうとした、ら。
がたんッッ
俺と知らないおにーさんの間、空席だったところに急に誰かが座った。
割り込むみたいに。
おらおら全開で。
「オレンジジュース、こいつにお代わりを」
おらおら全開で……あまーいミカン汁を注文した巽。
「後、マルゲリータも一枚」
「た、巽さ……」
どびっくりして、つい名前を呼んだら、座ったばかりのイスから腰を上げた巽は俺を見下ろして。
「後一時間、ピザ食って大人しくしてろ」
またブスリと俺に釘を刺して元のテーブルに戻って行った。
巽の行動を見ていた卒業生一同は戻ってきた体育教師を質問攻め。
「緒方先生、今のナンパ!?」
「ナンパですよねっ?」
「ナンパじゃねぇよ、妹だ」
「「「似てねーーーー!」」」
え。あれ。
あれ?えっと?
いつから……気づかれてたんでしょーか?
七時開始って言うから、七時過ぎにそーっと入店して、カウンターに案内されたときから?
ココからちらちら様子見てたときにばれた?
うへぇ……だせぇ……。
「変装潜入大成功でしょ!?」って浮かれてた俺、何なの。
「どうぞ」
空になったグラスと入れ替わりに置かれた二杯目のオレンジジュース。
さっきよりも苦く感じるのは気のせいでしょーか。
一時間後。
「え、先生もう行っちゃうの!?」
「二次会はっ?」
「カラオケ行こうよ!」
残念がる卒業生らに「カラオケは苦手だ」と巽が伝えれば。
ほろ酔い大人女子らは元顧問に握手を強請り、巽はちゃんと一人ずつ握手して、うわぁ、積極的な女子大生(?)はハグして……っハグしやがったぁ……っ。
巽、俺のなのに。
「あんまり呑み過ぎるなよ」
「「「はーーーい!!」」」
そうしてバ、バル?を後にした。
まだ人がいっぱいの繁華街を並んで歩く。
俺の分、巽が払っちゃった。
今月助かったーーー! ……じゃなくて。
「巽さん……後で返すね?」
「いつも焼肉奢らせてるくせに今日は自腹志願か」
なんだよその言い方! その通りだけど! むかつく!
……ううん、むかつくっていうか……はぁ……俺ってほんとガキだなぁ。
なにやってんだろ。
浮かれたり、落ち込んだり、空回り。
もっと巽みたいにどーんと大人っぽく構えられたらいーのに。
どーでもいい小さいことで気分ころころ、あっち行ったりこっち行ったり、ついつい弾みで蹴られちゃう石ころみてー。
「すみませーん、割のいいバイトとか興味ある?」
うげっ、キャッチだ、あれっ、俺の歩調遅れてたっ?
巽どこっ?
うわーん、もうやだっ!
ウチ帰って今すぐメーク落として風呂入ってマンガ読みながらポテチ食べたいよーーー!!
「コーイチ、何やってんだ」
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