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35-パラレル番外編★憧れの君のために女装ってもイイですか。①

ついこの間に夏休みが終了したかと思えばあっという間に目前に迫った体育祭・文化祭。 「また緒方が学年対抗リレーのアンカーとか。さっぶ。きっも」 運動神経抜群+成績優秀+男前なクラスメートかつ友達である緒方のことが。 コーイチはぶっちゃけ誇らしくて堪らなかった。 「コーイチ君、緒方君本人より嬉しそう」 騒がしい休み時間、教室後方の窓際、口では貶しつつもニマニマが止まらないコーイチは隣に立つ幼馴染みの三里(みさと)に「別に嬉しくないし!さぶいしきもいし!?」と無駄に声を張り上げた。 すると。 反対側の隣に立ってハードな清涼剤をボリボリ食べていた当の緒方に頭を鷲掴みにされた。 「いでッ」 「さぶくてきもくて悪かったな、コーイチ」 「いだぃぃッ頭ちぎれるッのうみそ出るッ」 バスケ部在籍、この教室で一番背が高い緒方に髪をワシワシされてコーイチは無邪気に笑う。 「お前は仮装レースのアンカーだろ、着ぐるみやれよ」 「着ぐるみなんか暑くて死ぬし!やだ!」 緒方ってマジで自慢の友達だ。 かっこいいし、誰からも頼りにされてっし、誰にでも平等だし。 そしてモテる。 モっテモテ、だ。 来るもの拒まず、去るもの追わず、そーいうトコもなんか憧れる、あんま誰とも長続きしねーのが不思議っちゃあ不思議なんだけど。 夏休み中に女子高だったカノジョと別れて今はフリー、つまり次に告ってきたコと付き合う流れだ、コレ。 女子の皆さん、緒方の横、今空いてますよ! チャンスですよー! 「もーやめっ、はげるっ、俺の頭ボール扱いすんなぁ」 でもほんと何の仮装しよっかな? 「なーなー三里ぉ」 「うん」 「なんで緒方ってあんなかっこいーんだろ? かっこいいの塊なんだろ!?」 「コーイチ君、それ、去年の入学式の時から言ってる」 放課後、ファストフード店で三里と一緒にハンバーガーを食べていたコーイチは目をパチクリさせた。 「あの背が高い奴すごいすごい、って」 うへぇ、そうだっけ……。 「今度の仮装なんだけど」 「うんうんっ今考えてんだけどっ三里なんかいい案あるっ?」 前下がり気味のサラサラ黒髪、眼鏡をかけた三里は天然紅梅色の唇を綻ばせるでもなく表情が乏しい顔つきのまま回答した。 「チアガール」 「えっ?」 なんでまた急にチアガール? 「仮装競争の次が学年対抗リレーでしょ。だから。緒方君を応援したい気持ちをこめてチアガール」 あっ……なるほど~~……? 「でもどこでチアガールの格好準備しよ?」 「僕が準備するから。メークも」 「え? メーク? 化粧すんの? 怒られない?」 「だって仮装競争だし。仮装してなんぼ、の世界じゃないの」 「し、知んない、一応阿南先生に聞いてみよっかな」 阿南(あなん)先生とは、コーイチらのクラスの担任なおかつ緒方が所属するバスケ部顧問のことだった。 見た目は決して悪くないのだが口数が極端に少なく、何を考えているのかわかりづらい、コーイチ及び多くの生徒が怖がっている寡黙な教師だった。 「僕が聞いとく。でも大丈夫だと思う。緒方君のために頑張ろうね」 「うんっっ」 「誰のために何頑張るって?」 ぎょっとして斜め後ろを見てみれば部活を終えてスポーツバッグを引っ提げた緒方が立っていた。 「阿南のために何かやるって?」 うぇぇ~、緒方のためにいろいろ頑張るっっ、とか言えね~、しぬ~、むり~。 「う、うるせー!!」 「うるせぇのはお前だ」 「いででででッはーげーるーッ」 短髪黒髪、腕捲りされた長袖シャツ、何とも男っぽい筋張った両腕。 そんな男前スタイルの緒方と比べれば華奢な体型のコーイチ。 彼女イナイ歴=年齢、興味はあるけれどイマイチ前に進めない、極々普通の男子高校生だ。 「限定のヤツ買ってくる」 ズシリと重たいスポーツバッグを膝に乗っけられたコーイチは大股でカウンターへと向かう緒方の背中をチラリと見送った。 同じ男で高校生なのに違う生き物みたい。 憧れるよなー。 ほら、店員さんの笑顔だって一段とキラキラしてっし、周りだって注目してっし。 「緒方ってやっぱすげー」 癖になっている独り言を無意識に洩らした幼馴染みに三里はそっと笑う。 「コーイチ君もコーイチ君ですごくなると思うな、僕」

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