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小ネタあつめ!!⑤

■なんちゃってお花見デート!! 「本当にここでいいのか、コーイチ」 「うん!! このご時世だしね!! じゅーぶん!!」 今日は巽とお花見デート!! 天気もいいし、あったかいくらいだし、正にお花見日和!! 「ほらほら、きれいだね! これもう満開じゃん!」 「そうだな」 「意外と人多い!」 「この公園は毎年混むんだ」 「ふーん! この辺でごはんにしよっか!」 持参してきたレジャーシートを広げたら、巽、堪えきれなかったみたいに吹き出しやがった。 「いやに大荷物だと思ったら、色々仕込んできたわけか」 「だってお花見だもん? ごはん食べるならマストアイテムじゃん?」 ここに来る途中で買ってきたテイクアウトのエビカレーセット、並んで買ったパン屋さんのサンドイッチを並べた、うんうん、雰囲気満点、盛り上がってきた~! 「はい、巽さんにはおビール」 「お前、未成年だから購入できねぇだろ」 「家で冷えてたの、勝手に持ってきた!」 「……これは家の冷蔵庫に戻しておけ」 「ほらほら、ハクチョウが泳いでるよ、巽さん」 「あれはガチョウだ」 まー、お察しの通り、ここ、巽んちです。 このご時世なのでリアルお花見は諦めて、仮想的な? お花見を楽しんでるワケです。 仮想って言ってもVRゲームとかじゃなくて、テレビのお花見映像をテレビで見るだけ、お手軽です。 「人が少ない穴場まで車走らせてもよかったんだがな」 春休み中でも、どんなときでも忙しい先生の巽。 そりゃードライブデートも大好きだけど、ウチにいる方が疲れないだろーし、ゆっくり休めるだろーからさ! 「いーのいーの。ほらほら、巽さん、お仲間のライオンもトラもいるよ」 「サファリパークの宣伝まで実況するんじゃねぇ。つぅか、お仲間ってどういう意味だ」 部屋の中央に広げたレジャーシートの上で遅めのランチ。 テレビのお花見映像は終わっちゃったけど、悪くない、それに虫がいない、突風で髪も乱れない、汗かかないからメーク崩れの心配もいらない。 「室内お花見って最高じゃ!?」 「花見っていうより室内ピクニックか」 「室内ピクニック! 流行るかも!」 「どうだかな」 「この花柄スカートかわいい!? お花見コーデっぽい!?」 「お花見コーデの基本がわからねぇ」 でも、そう言う巽も完全なる部屋着ってわけじゃなくて、黒の五分袖シャツにカーキのイージーパンツ、このまま余裕でお出かけできる格好してる。 「このサンドイッチうまいな」 巽は世界で一番かっこいいサンドイッチの食べ方を習得してるに違いない。 あー、俺もサンドイッチになりたいよー(?)。 「もっとあるから! もっと食べて!」 「お前はいいのかよ」 「エビカレーの食べ方も世界一!」 「本当にどういう意味だ」 ■おままごと? 「部屋の中でこんな風にしてたらオママゴトみてぇだな」 「巽さん、オママゴトやったことあるんだ? 何役? やっぱりダンナ様!? それとも番犬!?」 「……」 「いだだだだ! ごめんなさい!! ほっぺた千切んないで!!」 「旦那役やってやるから、お前は嫁役やれよ、コーイチ」 「えぇぇえ……? お、おかえりなさい、アナタ♪ バスケの練習お疲れ様♪ 今日もカワイイ女子らに囲まれてウハウハ指導してきたのかしら♪」 「……萎える、やり直し」 「いだだだだだ!!!!」 ■ごろごろ、のんびり!! 「おなかいっぱい!!」 「食べてすぐ横になったら牛になるぞ」 「ぶひーーー!!」 「なんでそこでブタになるんだ」 買ってきたものを二人で完食して、レジャーシートの上でごろごろ、うはー、結局髪乱れるけど至福のときだー。 「コーイチ」 あ、ヤバッ、さすがに行儀悪いって怒られっかな。 慌てて起き上がって後ろを見たら。 足を伸ばして座っていた巽、自分の膝を指差した。 「来いよ」 えぇぇぇえ? このお花見デートプラン、そんなスペシャルなオプションがついてるんですか!? 「や……やったぁ~……では、お言葉に甘えまして……」 「なんで敬語だ」 巽の膝枕。 これ、至福の絶頂だ。 幸せが大渋滞してます。 「わ」 バスケットボールを片手で楽々握り潰せそうな……は、大袈裟か、とにかくでっかい手で頭をイイコイイコされた。 頭、溶けそう。 脳みそまでどろどろになりそう。 「ブヒィ……」 「どういう感情の鳴き声だよ、それは」 「ブヒ、ブヒ!」 巽は笑った。 この角度からの笑顔はマジでやばい。 俺の世界が巽でぜんぶ埋まっちゃう……。 「あ……あざした~」 「もういいのかよ」 「え~、これ以上膝枕されたら耳から鼻から何かいろいろ飛び出てきそ」 「とことん意味がわからねぇ」 照れながら起き上がったら、今度は目の前で巽がレジャーシートの上に豪快に寝そべった。 「交代」 「っ……か、かしこまりました!!」 で、次は俺が巽に膝枕。 身長高いのに頭ちっちゃい。 割と睫毛が長い。 正にお昼寝肉食獣。 「ぶふっ……」 「おい、何笑ってんだ」 「いででっ、鼻摘まむな~っ」 「ブヒブヒ鳴いてみろよ、おら」 「ぶっ……ぶひ……!」 もしも巽が肉食獣で俺がブタさんだったら食べられてもいい……。 てか、巽のお口にしか食べられたくない……。 「!!」 ちゅって、キスされた。 こっ……このスケべ体育教師め……!! 「これぞ室内ピクニックの醍醐味だろ」 「これは室内お花見だもん……てか、外でもふつーにするじゃん、巽さん……別に醍醐味じゃねーもん」 「もしも本当に桜の木の下だったら絶景だったのにな」 シュシュが外れて乱れていた髪を怖いくらい優しい手つきで梳かれた。 「満開の桜とコーイチのツーショットが見れた」 「えぇぇえ……なんか照れちゃうなぁ……」 「あと毛虫な」 「なんで! 毛虫いらねーもん!」 「それと酔っ払い」 「酔っ払い、いらない!!」 はー、好き。 春休み、一緒に過ごせて嬉しい。 来年は普通にお花見行けるかなぁ。 ■わわわわーっ 「さすがにこれは室内ならではの醍醐味だろ……?」 いつの間にか夕日で茜色に染まっていた外。 夜桜見物したい人達が動き出す時間帯だろーか。 「ぅぅぅっ……わかんなぃ……巽さんなら室外お花見でもやりかねない……!」 「テメェなぁ。仮にも教職者なんだぞ、俺は」 ……なんて信憑性のないお言葉……。 敷きっぱなしのレジャーシートの上で巽にのしかかられて、どっちも服着たまま、いっぱいいっぱい……シた。 「ん~~~……っっ……きもひ、ぃ……」 「俺もだ」 「た……たちゅみひゃ……」 「桜の木の下でお前のこと抱いたら、一体どんなだろうな、コーイチ」 「っ……っ……しっ、知るかぁっ……変な想像させんなぁ、このスケべ教師……!!」 「想像してみろよ」 いつまで経っても敵わない巽に、全身、体の奥までイイコイイコされて。 気がつけば日は沈んで夜を迎えていた外。 「あー……涼し……」 部屋の明かりは点けないで窓を開けた巽、涼しい夜風が頬に当たって、レジャーシートの上で丸まっていた俺はほっとした。 「月、出てる?」 「見えねぇな」 「室内お月見する?」 「月見は秋だろ」 半裸の巽は、また膝枕してくれて、ぼっさぼさになった髪を梳いてくれた。 おにゅーのスカートやデニムのアウターはほっぽり出されて、代わりにタオルケットをかけられていた俺、ますます丸くなった。 「きもちいい」 室内でも、外でも、世界のどこでもいーよ。 巽が一緒にいてくれるのなら、俺、いつだって<好き>が最高潮だから、テヘヘ!

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