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「んぶ、ぶっ、んむっ、ちょっ……いい加減、も、や、め、ろ……!」
緒方とのキスにのめり込んでいたはずのコーイチは、唐突に、がむしゃらに抵抗した。
抵抗された緒方はしぶしぶ顔を離すと不平タラタラな眼差しで涙目の女装男子を見下ろした。
「なんだよ、乗り気だったくせに」
「あほかッ……やりすぎなんだよっ、ぶちゅぶちゅしまくりやがって……た……た、た、た……っ」
「た、た、た、た?」
あっという間に全身を火照らせたコーイチは、まだまだ満足できずに未練タラタラで覗き込んでくる緒方を恨みがましそうに睨めあげた。
「こんな、すんげーぶちゅぶちゅされたら……勃っちゃう……」
実のところ、もう、ちゃっかり反応していた。
「そんな格好で勃起してんのかよ。えろ」
「はぁ? そっちがどえろいちゅーなんかすっからじゃん!?」
もうTPOも忘れて悔しげに喚いていたら、緒方に腕をとられてベンチから立たされ、スケべなムード漂う公園からやっと脱出できると一安心しかけたコーイチだが。
「来いよ」
「えっ、そっち出口じゃないよ? どこ行くの!? もしもし、緒方さーーーん!?」
緒方に連れて行かれた先は公園内に設置されているバリアフリーの多機能トイレだった。
「一発で入れるなんてツイてるな」
「……緒方、ほんとに初めて来た? やっぱ常連でしょ?」
「友達にいろいろ聞いたんだよ」
「緒方の友達すけべすけべすけべすけべ!!!!」
清潔感ある広めのトイレでコーイチがぎゃーすか喚けば緒方は「うるせぇ」と言い放ち、二人のバッグを壁際の多目的シートに乗せた。
「こんなとこ連れてきて何する気だっ、もう帰りたいっ、帰ってマンガ読んで寝た、っ、っ、っ」
手洗い場の前で一人騒いでいたコーイチの前に大股で戻ると喧しい唇を唇で塞いだ。
頼りない腰を抱き寄せ、両足の間に片膝を割り込ませて。
極めて経験不足の初心な女装男子に濃厚キスをお見舞いした。
「んっ、んっ……っ、ひぃッ……そんな擦んなぁ……っ」
膝で股間を悩ましげにグリグリされてコーイチは堪らず悲鳴を上げる。
「見せろよ、コイ」
「っ……やだ……」
「見せろ」
「ぃっ……っ……!」
強めにグリグリグリグリされた。
手洗い器と緒方に挟み込まれて逃げ場のないコーイチは、これまでにやっぱり経験のないヤラシイ刺激に追い立てられ、成す術もなく……。
「これもう勃起してんだろ」
「っ……っ……緒方こそ、お前っ、彼氏いたんじゃねーの!?」
「は?」
「だ、だって、チンコ見せろって、男も女もイケるってことじゃ!?」
「違ぇよ」
コーイチは……湯気が出そうなくらい頬をまっかっかにさせた。
ニット越しに両手でお尻を鷲掴みにされて、あろうことか、しっかりモミモミ揉まれて口をパクパクさせた。
「男相手に欲情するなんてお前が初めてに決まってンだろ」
でっかい両手に貧弱なおけつをすっぽり包み込まれ、長く太い指が尻たぶに食い込んで、揉みしだかれて。
コーイチは緒方の胸に突っ伏した。
「見せろって」
「や、やだ~~……っ、勃起したチンコなんか誰にも見せたくない~~……っ」
「じゃあ俺が無理やり脱がせて見るからな」
「そんな横暴あるか~~!」
自分の胸に頭を擦りつけて嫌がるコーイチに緒方はこっそり見惚れる。
「別に減るもんじゃねぇだろ」
や、やくざの言い分だ……ドラマとかで悪い人が言うやつだ……。
「ううう……緒方、先生にぜんっぜん向いてない……きっと組とかに向いてる……」
「もしもし、コイ、今から脱がせるからな」
「ひぃぃっ、嫌だっ、わかったよ、もぉ~~……とりあえずケツから手ぇ離せぇ……」
一向に引いてくれない緒方にコーイチはボキッと折れた。
手洗い器に腰付近をもたれさせ、ちょっとだけ離れた緒方をじろっと睨んだ後、伏し目がちになって。
ニットワンピの裾を両手で掴み、おっかなびっくり、たくし上げていった。
露出させた太腿を寒そうに擦り合わせ、フロントが盛り上がったボクサーパンツまで緒方の眼前に泣く泣く曝してみせた。
「……お前やばいな……」
なんだよ、それ、どーいう意味だ。
「やばすぎンだろ」
に、二回も言いやがった。
「えろい」
お尻を揉んでいた手が、今度は、迷うことなく股間にまで伸びてきてコーイチはビクリと体を震わせた。
「っ……お、緒方、おさわり禁止」
「今、コイ、ビクッとしたろ」
「っ……してない」
「かわいー反応しやがって」
手の甲で、すり、すり、上下に撫でられて。
掌で、ずり、ずり、擦り立てられて。
不慣れ極まりない愛撫にコーイチは唇をきゅっと噛んだ。
そんな仕草の一つ一つが視界に強調されて、緒方は、さらに煽られる。
「童貞で初キスは卒業したばっか。じゃあ触られんのも当然初めてだよな」
項垂れたコーイチが素直にコックリ頷けばムラムラが加速した。
多感な性感帯に触れた途端、大人しくなった女装男子に唇の片端が独りでに吊り上がった。
「興味あるのも当然か」
サイズを確かめるみたいに大きな掌をぴったりあてがってみる。
ボクサーパンツ越しに、弱めに、しごいてみる。
「んっっ……」
コーイチは自分に触れる緒方の手首を咄嗟に掴んだ。
でも、自分で触るのとは全く違う、厚みも大きさも違う緒方の手に与えられる刺激が気になって仕方なくて、遠ざけることができなくて。
「……緒方ぁ……」
ピク、ピク、細身の体を震わせて恐る恐る緒方を仰ぎ見た。
「……やばぃ……」
素直に弱音を零した唇が可愛くて仕方なくて、緒方は、またキスをした。
ぶるつく舌先を捕らえ、吸いながら、コーイチの童貞ペニスをしつこく丁寧に撫でた。
「はっ……ぁ……んぷ……っ……」
緒方にさわられんの、きもちいい……。
熱くて、ジンジンして、ムズムズして、どうしようもなくなる……。
緒方に感じちゃってる、俺。
「ぁ」
緒方の利き手がボクサーパンツの内側に滑り込んできて、コーイチは、涙の張った双眸までブルリと震わせた。
窮屈な下着の内側で直にペニスを撫で上げられた。
根元から先っぽにかけて大きな掌がゆっくり行き来した。
「あ、あ、あ」
「感じてんのか、コイ」
緒方の肩をぎゅうぎゅう掴んでいたコーイチはこどもみたいにコクコク頷いた。
「やばぃ、緒方ぁ……きもちい……」
「……えろ」
「っ……緒方に触られてたら、俺ぇ、えろくなっちゃう……」
「……俺限定でコイはえろくなんのかよ?」
「なるっ……なっちゃぅ……っ……ひ、ぃ、ぃ……耳噛むな~~……っ」
耳朶を甘噛みされてコーイチは切なそうに眉根を寄せた。
とろとろと濡れ始めた先っぽ。
鈴口に親指を浸からせ、クチュクチュといぢめれば、微弱な震えに苛まれていた腰が一段と跳ねた。
「お前の、濡れてきた」
「ぁ、ぁ……っ」
「ぱんつ汚れるから出すぞ」
「ぇ、ぇ、ぇ……っ……あ……」
ボクサーパンツがずり下ろされ、ニットワンピの裾の陰でシコシコされて、コーイチは甘痒いゾクゾクが止まらなくなった。
甲斐甲斐しい愛撫に従順にどんどん膨れ上がっていく。
緒方の手の中で硬くして、張り詰めて、先っぽからどんどん濡れていく。
「ぃ……ぃっちゃ、ぅ……」
「もう射精すんのかよ、コイ」
「射精ぇ、しちゃぅ……っ……緒方のシコシコ、きもひぃ……っ……ぅっ、ぅっ、ぅっ、ぅっ……!」
より一層熱烈にしごかれた。
よだれまで垂らしたコーイチは真正面の緒方に縋りつきたくなって、しかし彼の着用する学ランが視界いっぱいに埋まると、絶頂寸前ながらも気後れした。
「お、緒方、だめ……っ……制服汚しちゃうっ……」
離れたがる素振りを見せると、ぐるんっ、緒方は速やかにコーイチの体の向きを変えた。
「これなら好きなだけ射精できんだろ」
柔らかな耳たぶにまたかぢりつき、コーイチの服が汚れないよう大胆に捲り上げ、発熱に漲る童貞ペニスを勢いよくしごき立てる。
手洗い器に両手を突かせたコーイチは薄いお腹を頻りに波打たせた。
込み上がってくる射精欲。
頭の奥がぼんやり霞んだ。
「ん……っっ……いく……っっ」
びゅっっっくん、射精した。
公園片隅のトイレで、今日初めて会った緒方に一思いにいざなわれて、かつてない絶頂に達した。
「はっ……はぁっ、はぁっ……はぅ、ぅ、ぅ……っ……ぅ~~……っっ」
同級生男子の腕の中で頻りに身悶えていっちゃった女装男子。
病みつきになりそうな恍惚感に撃ち貫かれて、しぶとい微痙攣に腰や内腿をピクピクさせて、貪欲に感じ入っていたら。
ぬるるるる……っっっ
「えっっっ?」
自分の股の間からいきなりコンニチハした……屈強なデカブツを目の当たりにして直ちに我に返った。
「なにこれ!!??」
「なにこれって、俺のだ、虫が出たみたいな反応すんじゃねぇ」
「む、虫どころじゃない、猛獣っ、猛獣出てきたんですけど!!」
「やめろ、笑って萎える」
猛獣デカブツ出現に驚愕してジタバタするコーイチを、緒方は、後ろから押さえ込んだ。
達したばかりで白濁に濡れる童貞ペニスに非童貞ペニスをヤラシク擦りつける。
片手を添え、一纏めにし、緩々としごく。
「ひ、ぃ、ぃ、ぃっ……俺いったばっか~~……! キツイよぉ……!」
「お前に構ってたら勃ったんだよ、責任とれ、コイ」
「んぎゃっ……猛獣と擦れてる~~……っ」
「ッ……だから、それやめろ、萎えんだろーが」
自身を猛獣呼ばわりしてぱにくるコーイチに笑い出しそうになるのを堪え、緒方は、腰まで揺らめかせて摩擦を強くした。
「お前、あの面子んなかで一番えろいんじゃねぇの……会ったその日にこんなことしやがって、このクソスケべ……」
噛まれてうっすら濡れた耳たぶを熱い吐息が掠めていく。
手洗い器を全力で掴み、後ろから揺さぶられていたコーイチはまたじわじわと露骨な快感に身も心も巣食われていく。
「お、緒方だって俺と同じじゃんかぁ……っ……このクソムッツリデカチン……っっ」
「あのな、俺のこと貶しすぎだ、コイ」
コーイチは壁にとりつけられた鏡越しに緒方を見つめた。
「俺の……ほんとの名前、コーイチ……」
ほんのり汗ばむ首筋に顔を埋めていた緒方は上目遣いに鏡越しにコーイチを見つめた。
「……コーイチ……」
名前を反芻されて、甘苦しい感情に胸が張り裂けそうになって、お腹の底までキュンキュンさせて。
コーイチはその目にどっぷり見惚れた。
「緒方ぁ……」
「ん……もっときもちよくしてやる、コーイチ……」
「ふぅぅっ……なるっ……緒方ともっときもちよくなる、おれ……」
知らなかった。
相思相愛ってこんなきもちいいんだぁ……。
次の日の日曜日、二人はまた同じ街で会う約束をして。
「あのさ、今頃気づいたんだけど、俺って女装してくるべきだった……?」
待ち合わせ場所で再会するなり、女装していなかったコーイチにおずおずと尋ねられて緒方は肩を竦めてみせた。
「やっぱ女装してくるのが正解だった? ていうか俺がコイちゃんだってわかった?」
お互いに私服姿の二人。
不安そうにしているコーイチの頭を緒方はポンポンした。
「お前はコーイチだろ」
それだけ言って歩き出し、コーイチは慌てて彼の後を追いかけた。
「ねーねー! 今日どこ行くっ?」
「俺は今からバイトだ」
「は?????」
「フリータイムで来いよ、コーイチ」
「俺に数時間ヒトカラしろって!? なにそれ!! ほんっとなんだそれ!?」
「注文したら俺が運んでやる」
「ばーーーーか!!」
キレちらかしていたコーイチだったが、緒方のバイト先であるカラオケ店まで後ちょっとのところで、ふと小声になって問いかけた。
「じゃあ緒方のこと注文してもい……?」
緒方は……眠りについていたはずの猛獣が危うく目覚めそうになった。
「……していい、いくらでも注文しろ」
「やったぁ」
寸でのところで猛獣を眠らせた緒方、その隣で何にも知らずにコーイチは呑気にはしゃぐ。
今度は女装して会おっかな。
緒方にせっかくもらったシュシュ、使わないともったいないもんな、テヘヘ。
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