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番外編:MEMORY ④

「うっ」 「まだ苦しい? そうだよね、だって俺は〝手にキスをしろ〟と言ったんだ」  俺を、潤んだ眼差しで見上げる。見上げながら、真っ赤に染まった舌で俺の足を舐め上げた。 「は…」  思わず吐息が零れた。  この俺にスイッチを強くかけられたというのに、きっと凄く苦しいはずなのに、それでもまだ反抗しようとする強情な青年。 「可愛い…」  呟くのと、彼がどさりと躰を床に投げ出したのは同時だった。 「伊沢くん、聞こえる? こんなにも俺に逆らって頑張る子、初めて見たよ。凄く凄く、気持ち良かった。そのご褒美をあげるから、俺の手にキスをして?」  荒い呼吸を繰り返し倒れ込んでいる彼が、一度だけぎゅっと瞼を閉じた。そうして開いた瞳は降参をかかげ、差し出された俺の手にそっと口付けた。周りが、わっと湧いた瞬間だった。だけど、ノーマルな奴らがその異様さに気づくのに、それ程時間はかからなかった。 「伊沢くん。足、指まで全部舐めて」 「えっ、」  驚いた声を上げたのは伊沢くんじゃない。俺たちの周りを囲む学生たちだった。 「できるでしょ? 指と指の間まで、きちんと全部綺麗に舐めるの。ご褒美はその後だよ」 「ぃ…ぃや…ぁ」 「なぁに? 言うこときけないの? 悪い子だなぁ、君は。さっきも君は、手だって言ったのに足にキスしたね。悪い子にはお仕置きが待ってるけど、良いの? ねぇ」 「ひあっ!」  唾液に濡れた足を、彼の股間に強く押し付ける。加減なく踏み込んでやれば、伊沢くんは涙を流し許しを乞うた。 「ごめっ…なさ…ひっ、やだ…ぃた」 「悪いと思ったのなら、ちゃんと言うこときいて?」 「はっ…はひ…」  自分の股間から戻された俺の足に、伊沢くんがもう一度舌を這わせた。泣きながら、そして時折足に噛み付きながら、だけど。 「あはは、噛み付いた! かぁわいいなぁ~!」 「き、清宮くん…あの、」 「ねぇ、この子貰ってってもいい?」 「え? あ…うん、えっと」 「やったー!! 今日は誘ってくれてありがとね? お陰で最高の宝物が手に入ったよ」  強いスイッチをかけられ、泣きながら俺の足を舐める伊沢くんの腕を掴み立ち上がらせる。 「はい、じゃあ伊沢くん。お仕置きとご褒美は俺のお家でねぇ。みんなにバイバイしよっか?」 「あぅ…う…さよう…なら」  苦しげにぺこりと頭を下げた彼を見て、笑うことができる奴はもういなかった。

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