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①
『何だよ、飯より“俺”が食いたいって?』
僕の目の前で、威圧感のある男前が不敵に笑う。
『なっ、何言ってるんだよ、兄さん…』
『隠しても無駄だ』
『いやっ、あっ!』
何から何まで僕とは真逆の兄が、僕の両手を拘束する。
異国の人の様に色素が薄い兄と、しっかりと黒を纏う僕。身長だって兄は平均よりも随分と高いのに、僕の身長は平均を大きく下回っている。肉付きの悪い僕と違い、細身では有るもののバランス良く筋肉を付けた兄の体。
何一つ似ていない僕らは、兄弟だと口にしなければ誰もその事実に気付くことはない。だがそれもそのはず、僕らは兄弟と言っても、血など一滴も繋がってはいないのだから。
『やだ…やめて、やめて』
『ハッ! ヤダヤダ言いながら、結局いつも泣いて善がってんだろ。なぁ?』
『に、兄さんっ』
『“兄さん”じゃねぇ。ちゃんと名前呼べよ、ケイスケ…』
そう言って義兄は僕の素肌をあば―――
「おいッ!!!」
ハッとして目の前を見れば、不機嫌そうに眉間に皺を寄せた男前な兄、葉介 がテーブルを叩き僕を睨んでいた。
「あ、あれ…」
「何ボサっとしてんだ、さっさと飯食え!」
「ひっ、」
「食い終わったら俺に珈琲淹れろ」
「ひゃいっ!」
ああ、またやってしまった…。
僕は冷や汗をかきながら、慌てて茶碗の中のご飯を口に掻き込む。その間もずっと鋭い目付きで兄が睨んでいるから、もう何と言うか、全く生きた心地がしなかった。
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