46 / 46

バレンタインデー小ネタ

「今回こそ北見さんにちゃんとチョコ渡してやるか」 バレンタインデー前、気恥ずかしいながらも北見のために期間限定フェアなるチョコレート売り場へ俯きがちにコソコソ出向いた航也だったが。 あれ、意外といるな、男。 彼女の付き添いだったり、俺みたいに一人の奴だっているし、ふーん、バレンタインデーも何かいろいろ変わってきてんだなぁ。 あれ、すげー注目されてる人いるな。 背ぇ高い、服のセンスもいいシンプルな男前、真剣にチョコ見て回ってる……って。 え。 あれって。 えええ? 「お。航也」 北見さん……かよッッ!! 「お前もココに来たの、見事にかぶったな」 「う、うるせっ」 「もちろん俺にあげるためのチョコ選びだよな? 他の奴だったら義理でもアウトだから」 「ちょ、あんまこっち来んなよ、こんな場所で男二人とかさすがに目立つだろ?」 「別に目立ってもいいんじゃない」 「……ほんと食えない奴だよな、北見さん」 「食えない奴? 俺、航也なら美味しく頂くけど」 「うるせ」 そしてバレンタインデー当日。 「ほら、チョコ、どーーーぞ」 「ありがとう、航也からもらえる日が来るなんて、嬉しくて涙が出そう」 「フン」 「あーん」 「はぁ? 誰がそこまでやるか、自分で食えよ」 「俺は食べさせてあげたのに。航也ったらひどいなぁ。意気地なし」 「別に意気地なしじゃッ……あーーもーーッ……一個だけだからな」 「あーん」 「なんでこんなことまでしなきゃなんねーんだ……」 がぶッッ 「いででででッ」 「おいしかった、ごちそうさま」 「……どーいたしまして」 「じゃあ次は俺から航也に」 「うわ、これ高かったヤツだ」 「ちょっとお酒入ってるんだよな、航也には刺激が強いかも」 「バカにしやがって」 「ハイ、あーん」 「……」 「俺の指噛んでもいいよ? その代わりケツかじらせてね、思う存分」 「代償が高過ぎる」 「後でホットチョコレートカクテル作ってあげましょう、あ、カクテルじゃないタダのホットチョコレートの方が航也には合ってるかな」 「フン!!」 指だけじゃあ足りない。 心臓ごと噛みつかせてもらわなきゃあ割に合わないよ、北見さん?

ともだちにシェアしよう!