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バレンタインデー小ネタ
「今回こそ北見さんにちゃんとチョコ渡してやるか」
バレンタインデー前、気恥ずかしいながらも北見のために期間限定フェアなるチョコレート売り場へ俯きがちにコソコソ出向いた航也だったが。
あれ、意外といるな、男。
彼女の付き添いだったり、俺みたいに一人の奴だっているし、ふーん、バレンタインデーも何かいろいろ変わってきてんだなぁ。
あれ、すげー注目されてる人いるな。
背ぇ高い、服のセンスもいいシンプルな男前、真剣にチョコ見て回ってる……って。
え。
あれって。
えええ?
「お。航也」
北見さん……かよッッ!!
「お前もココに来たの、見事にかぶったな」
「う、うるせっ」
「もちろん俺にあげるためのチョコ選びだよな? 他の奴だったら義理でもアウトだから」
「ちょ、あんまこっち来んなよ、こんな場所で男二人とかさすがに目立つだろ?」
「別に目立ってもいいんじゃない」
「……ほんと食えない奴だよな、北見さん」
「食えない奴? 俺、航也なら美味しく頂くけど」
「うるせ」
そしてバレンタインデー当日。
「ほら、チョコ、どーーーぞ」
「ありがとう、航也からもらえる日が来るなんて、嬉しくて涙が出そう」
「フン」
「あーん」
「はぁ? 誰がそこまでやるか、自分で食えよ」
「俺は食べさせてあげたのに。航也ったらひどいなぁ。意気地なし」
「別に意気地なしじゃッ……あーーもーーッ……一個だけだからな」
「あーん」
「なんでこんなことまでしなきゃなんねーんだ……」
がぶッッ
「いででででッ」
「おいしかった、ごちそうさま」
「……どーいたしまして」
「じゃあ次は俺から航也に」
「うわ、これ高かったヤツだ」
「ちょっとお酒入ってるんだよな、航也には刺激が強いかも」
「バカにしやがって」
「ハイ、あーん」
「……」
「俺の指噛んでもいいよ? その代わりケツかじらせてね、思う存分」
「代償が高過ぎる」
「後でホットチョコレートカクテル作ってあげましょう、あ、カクテルじゃないタダのホットチョコレートの方が航也には合ってるかな」
「フン!!」
指だけじゃあ足りない。
心臓ごと噛みつかせてもらわなきゃあ割に合わないよ、北見さん?
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