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「リフレッシュできた?」 「ん、まーまー」 「今の、それ。思春期の中高生の真似とか?」 帰りの電車で。 指定席の窓際に落ち着いていた航也はちょっとだけ顔を伏せて呟いた。 「ほんと感謝してる、ありがと、北見さん」 横顔を覗き込んでいた北見は満足そうに笑って座席シートに背中をくっつけた。 コンビニで買っていたペットボトルのミネラルウォーターを乾燥していた喉に流し込む。 「なぁ、北見さん」 「ん?」 「俺、北見さんと暮らしてぇ」 「ぶはっ」 いつも大人然としているはずの北見が水を噴き出したので航也は「きたねーな」と笑ってタオルハンカチを差し出した。 「就職決まって、安定した収入もらって、家賃折半できるようになったら。いっしょ住みてぇ」 車窓の向こうで快速に流れゆく長閑な景色。 同じ車両の端からこどものはしゃぎ声が聞こえてくる。 「無理かな」 なかなか返事をしない北見に航也は問い返した。 自分の領域を大事にしている男にとって同棲はやはり難しいのかと、諦めモードになりかけた。 「航也」 「うん?」 「いつの間にそんな一人前になったの」 「は?」 あからさまに年上面してきた北見に航也は堂々と仏頂面になった。 「かっこよかった、今のお前」 「……あ、もういーわ、忘れてください、今回の旅行代もちゃんと出します」 「そうやってすぐガキっぽくなるところはかわいい」 ああ言えばこう言う恋人に航也はいい加減本気で腹が立ってきた。 「クソジジィ」 「合鍵だけの気軽な関係じゃなくて。人生を共有する同棲、楽しみにしてる」 「……クソジジィ」 「就職先見つかるまで俺の店でバイトする?」 「これ以上甘やかすな」 「これ以上惚れさせるなよ」 立腹すらできずに閉口するしかなかった航也に北見は。 窓に片手を突くとさり気なくキスをした。 「それまでちゃんと俺のこと好きでいるように」 このクソスケベ、それはこっちの台詞だ。 正々堂々、受けて立ってやるよ。 俺ナシじゃいられない体にしてやるから覚悟しとけ、北見さん。 「ま。俺ナシじゃいられない体にしてあげる自信、十分あるけど」 「ッ……クソスケベ!!」 「しーッ」 車内の片隅で珍しくガチで焦った北見なのだった。

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