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第1話
待て。待て待て待て。なんで今俺はこうなってるんだ??
「あの、これは何なんすかね。」
「何って、愛の抱擁ですが?」
「離せ変態。」
なんで男に抱きつかれんといかんのだ。
転学初日にして早くもここに来たことを後悔してるわ。
遡ること1ヶ月。俺は親父からある通達を受けた。
「お前、来月から俺の兄貴がやってる学園に行け。」
「はぁ?叔父さんの学園ってあの坊っちゃん校の櫻木だろ?ぜってぇやだ。」
「お前に拒否権はねぇ!ていうか俺来月からイタリアに転勤になったんだわ。んで、一人暮らしとかお前無理だろ?だから寮もあって、学費も免除してくれるっつう兄貴んとこ行かせることにした。」
「え。親父イタリアいくのか!?言えよ!俺も行く!」
「ダメだっつってんだろ!お前は櫻木に行くんだよ!」
なんで俺が一人暮らしできないかっつーと、俺は1人で寝られないからだ。と言っても1人で寝たことが片手ほどしかないだけなのだが。1人で寝たとしてもぬいぐるみがないとダメだしな。
「ぜっっってぇに行かねぇかんな!!!」
ガチャ バンッ!!
「困った息子だな、あいつは。」
そんな親父の言葉も聞こえることなく、俺は普段使うことのない自室のベッドで蹲った。
もちろんお気に入りのぬいぐるみを抱いて。
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