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第1話

「一緒にうち、来るか?」  伊織が寮で迎える初めての夏休み。寮には半数以下の生徒しか残っていない。さらにこれからお盆の時期に入るので、残る生徒は例年2割ほどになるらしい。  ユキは普段、家との折り合いがあまり良くないと言ってはいるが、家業のかき入れ時には泊まりがけで手伝うそうで、お盆前後5日間は帰省するいう。  親からネグレクトを受け、厄介払いのように全寮制の学校に入れられた伊織は実家になど当然帰らない。その5日間どうやって過ごせばいいか思案に暮れていた。  宿題を全部済ませておけば、ユキが帰ってきてから思う存分一緒に居られるかなあ、とか、久しぶりに油絵の一枚でも仕上げてみようか、など考えていたら、冒頭のセリフ。ユキから発されたその言葉に、伊織は驚いた。 「えっ、いいの?」 本人にそのつもりはないが、あからさまに顔がぱあっと輝いた。  口には出さないが、寂しいと思っていた。毎日顔を合わせるのが当たり前になっているところへ、5日間も離れるなんて。 「5日も離れてんの、寂しいだろ?」 口の片端だけ上げてユキが笑う。 「…」  あら、否定しない。 ユキは内心意外だった。 いつもならムキになって否定してくるのに。  寂しいと言っていいのか、迷っているような、困った表情で押し黙る伊織を、ユキは抱き寄せた。 「明後日出るからな。荷物はサイフぐらいでいい」 まだ押し黙ったまま、無言で頷いた伊織は、そのままコテンとユキの肩に体を預けた。

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