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第217話円と渉8

(渉語り) こうして僕達は仲直りをした。 大体のことはセックスで解決する。確かめ合って、身体を繋げて、愛していると口にすると相手を思いやる気持ちが溢れてくる。 溝が深くない限り、恋人同士のいざこざはどうにかなると思う。僕の持論だが、好きがあれば大抵の修復は可能だ。 今回は洋ちゃんにとてもお世話になった。 もし彼等に何かあったら、今度は進んで力になろうと思う。『彼達』とは、悔しいが大野も含む。僕は大野に洋ちゃんを取られた感が強く、奴に親切をするつもりは全く無かった。 だが、それよりも貸しは作りたくないので、しょうがないが、いつか返してやろう。 あの2人は仲が良く、相手を思いやる気持ちに溢れている。だけども、いい事ばかりでは無い筈で、何かが起きた時に堪える強さが足りない気がする。乗り越えられないまま共倒れしてしまいそうな予感がした。 何度も言っているが、洋ちゃんを泣かせるような事をしたら絶対に許さない。 気が済むまで身体を重ねて、2人で泥のように朝まで眠った。少し早く起きた僕は、朝ご飯の準備に取り掛かる。 昨日は晩ご飯も食べずに寝てしまった。空腹で目覚めてくる恋人のために、冷蔵庫にあった材料で彼の好きなスクランブルエッグと野菜スープを作った。静かな朝に、まどか君を想いながら心を込めて料理をする。昨日の余韻が、甘い痺れとして身体のあちこちに残っていた。 だが、余程疲れたのだろう、恋人はなかなか起きてこない。 少し痛い腰をさすりながら寝室を覗いた。まどか君が心配した通り腰は重い。後でアスカちゃん鍼を打ってもらおうか……いや、笑われそうだから止めておこう。こっそり自分で打とう。 「まどかくーん、朝だよ」 「ん………」 カーテンを開け、揺すっても起きそうにないので、彼の寝顔をまじまじと観察した。可愛いくて、園児さんに人気のある、まどか先生そのものだ。子供が大好きで、僕を誰よりも愛してくれる。単純だけど真っ直ぐで嘘を吐くことが苦手な優しい人だ。 ふと、ある願望が頭に浮かんだ。気まぐれかもしれないが、言葉にしたくなる。 頭の中の文字に気持ちを急かされ、思わず口にした。言うだけなら誰にも迷惑を掛けないだろう。しかも相手は寝ている。 「まどか君、一緒に暮らそうか。君が嫌じゃなければ、毎日同じ物を食べて、寝て、笑っていたいな……なんちゃって」 うーん。気まぐれ……じゃないかも。 口にしてみても、違和感なくスッと自分の中に入ってきた。 どうやら僕は、彼と日常までも共にしたいと思っているようだ。思ったよりも一緒に居たい願望が強いらしい。彼無しの日々は物足りない。 今度、然るべき時に言ってみようかな…… もう少しだけ寝かせてあげようと、立ち上がった時だった。布団の中から手が出てきて、僕を引っ張ったのだ。 「……今のは本当?一緒に暮らそうって……確かにそう言った?」 「へぇっ、聞いてたの?」 「聞こえてきた。神様のお告げみたいに、ずっと言いたかったことを渉さんが口にするから、びっくりして息が止まりそうだった。 嘘じゃないよね。本気にしてもいい?」 布団から覗く瞳がキラキラと瞬いている。 「うん、いいよ。まどか君、一緒に暮らそう。出来るだけ早いうちに、新居を探しに行きたい」 「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。わーい。やったー」 「ちょっと待って、あ、腰が……」 布団から飛び出て、抱きつくまどか君を受け止めながら、僕は苦笑いをした。 そして勢いで同棲を始めることになった。 全く後悔はなく、どんな日々が待っているのか、未来が待ち遠しくて仕方がないのだった。 【これにて、円渉終了です。ありがとうございました。次は再びメインcpに戻ります。 大野がいよいよ本社へ戻って来ます。夢にまで見た、なごみと同じ職場に……お楽しみに。】

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