270 / 270
第271話StayHome11おまけ
「これくらい別に。いい加減、社長に戻ったらいかがですか」
「…………分かってる。さっき森本から連絡もらった。明後日から出社する」
森本とは、総務担当役員であり、数少ない白勢の理解者だ。
仔猫達の食べっぷりに目を細めた白勢は、征士郎と向き合った。
「明日はこいつらを病院へ連れて行く。それから里親を決める。受け入れ先はほぼ決まった」
白勢の人脈は征士郎さえも計り知れない。家に知らない人が尋ねてくるのにもすっかり慣れた。
猫の里親は面接をして決めるんだと、白勢は意気込んでいた。まるで入社試験だ。
「分かりました。明日は病院ですね」
「えらく素直に承諾するんだな」
「抵抗をやめただけです。無駄なことはしない主義なんで」
「お前のそういうとこ、好きだよ」
仔猫の匂いを纏った白勢が征士郎の耳たぶを軽く啄む。征士郎はくすぐったい感触に身震いした。
実は、仔猫のみならず、白瀬は征士郎の夜の世話もきちんとやっていた。自分の代わりに出社している征士郎の小さな変化を見逃さず、気が付けばフォローに回った。寂しがり屋の恋人が最優先であり、猫の世話はあくまで暇つぶしである。
そのお陰からか、征士郎は協力的だった。物事は進め方が大切であり、大切なものさえ押さえていれば、素行が悪くとも問題はないのだ。
「子供たちが見てますよ。いいんですか」
「いいよ。こいつらだって半年過ぎれば盛るだろう。予習だ」
「…………もう、何を可愛がっているのかよく分からない人だ」
「俺は、征士郎が一番。それ以上もそれ以外もないよ」
「嘘ばっか……」
「嘘ではないことぐらいお前が一番知っているだろう。ほらもっとこっち来い」
「…………ん…………ぁっ……」
甘すぎる口づけに、征士郎は立っていられなくなる。今日はどのように抱いてくれるのだろう。悦びに期待して愛しい人へ身を委ねた。
【おしまい】
ともだちにシェアしよう!