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困惑していた。
俺、館川夕士 は今、非常に困惑していた。
「まぁた…振られた…。何がダメなんだぁ?」
この世には男女と言う性の他に、アルファ・ベータ・オメガなんて厄介な性が存在する。
アルファに生まれたなら将来安泰、ベータに生まれたなら人並な人生を、そしてオメガに生まれたなら面倒事ばかりが付き纏う人生が待っている、本当に厄介な性だ。
だが俺は運が良かったのだろう。この命は成功したアルファの家系に産み落とされ、俺自身も見事アルファの性を手に入れた。
高校からはそれぞれの性のレベルでクラス分けされる中、アルファクラス内で置いてけぼりをくらう事なく授業についていける頭脳はあった。身長も順調に伸び、一目でアルファだろうと思われる肉体に育ちつつある。
だがそんな順調そうに見える人生の中で、一番大事なところに問題があった。
「やっぱこの顔が原因かなぁ…」
俺は人として一番の看板となる場所、そう…自身の顔に手を当てた。
アルファと言えば、その出来過ぎた容姿が特徴だ。実際、中学からの付き合いであり現在同じ大学に通う親友もアルファなのだが、それはそれは驚く程良い男だ。いや、アレは少々出来すぎな気もするがそれは一先ず置いておこう。
で、俺の容姿はどうなのかと言うと…アルファとしてはちょっとばかり残念なのだ。いやいや、決して出来損ないではない。人から羨まれる背丈もあるし、良いカラダをしていると褒められる事も多い。オメガやベータと間違えられたことは一度もない。だが問題は、些か印象の悪い目付きにあった。
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