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第4話
気がつくと朝を迎えていた。
ベットは整えられていて、青年が横でスヤスヤと寝息をたてていた。
縛られていた手首は外され、縛っていたロープと思っていた物は、私のネクタイだった。
元妻から貰ったネクタイ。こんな事に使われるとは微塵も思ってなかったろうに。
ふっ‥っと笑みが自然とこぼれた。
その時、元妻に対する思いが以前と違い、清々しく晴れている事に気がついた。
「ん‥んー‥‥」
青年が目を覚ます。
「あ、オッさん目ぇ覚ました?」
「私はオッさんではなく、小川健二という名前があるんだ。」
「あ‥ははっ!オッさん真面目だなー」
「オッさんではな‥」
言いかけると、青年はぺろりといたずらっ子の様に舌を出し、こう言った。
「こういうのはさ、名前なんかどうだっていいんだよ。
連絡先も聞かない。教えない。また何処かで出会ったら運命って事で♪」
シンプルな考え方。
だけど何処か切ない。
ホテルから外に出ると、目にしみるほど光り輝く朝日が登っていた。
でも最後にどうしても気になって、私は思い切って口を開いた。
「君の名は?」
すると青年はニヤッと笑って、
「俺の名前?
――て、いうの。」
中身の鬼畜さとは裏腹に、その名の通り青年は爽やかな風が吹く様なイケメンな名前であった。
その名が嘘は本当かは定かではないが、私はとても彼に似合っていると思った。
じゃぁまた、
と、言って、振り向かず颯爽と去って行く青年の後ろ姿に、青い空と眩しい太陽が照らされていた。
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