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「いいえ……」 「参った。役に立たない奴を拾ったわけか……それとも、意図的に押し付けられたのか」  青年は着物の袖口に腕を入れ、不機嫌さを隠そうともせずに眉間に皺を寄せている。 「すみません……お役に立てずに」  どんなに冷たくあしらわれたとしても、助けられたことには変わりない。何がなんだか分からないが、不機嫌にさせてしまったことに何故か焦りを感じた。 「自分の立場が分かっていないとはいえ、とんだお人好しだな」  呆れているような視線を向けられ「すみません」と小さく呟く。 「帰して村の奴らに文句でも伝えて貰おうかと思っていたけど……この辺一体は結界が張られていて、来た道を正しく戻らないと帰れない」  淡々と話していく青年の言葉に、血の気が引いていく。それでも帰ろうにも帰る場所が分からない以上は、どう行動を起こせば良いのかも分からない。  それ以前に、自分が何者なのか分からない事に不安が込み上げてくる。

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