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「僕も自分が誰なのかわからないんだ……」
二人にどう接すれば良いのか分からず、乾いた唇で言葉をゆっくりと発する。
「自分のことなのに分からないなんて」
「変なのー」
先ほどとは打って変わって、双子は顔を見合わせてクスクスと笑っている。
「お前たちはいつまでいるんだ?」
戸惑っている天野に気を使ってくれたのか、ヒスイがいつもの素っ気ない調子で双子に問いかける。
「わかんなーい」
「気が向いたら出ていく」
双子が揃って首をかしげた。
ヒスイが少し顔を顰めると「面倒事が増えた」とポツリと零す。
「そんなことより」
「お兄ちゃん、遊ぼ」
双子に片腕ずつ掴まれる。その冷たい手の感触に、思わず身震いする。
無理やり立たされると、裸足のまま外に引っ張られてしまう。
「ちょ、ちょっと!」
天野が慌てて声を上げるも、双子は解せず強い力でグイグイ引っ張ってくる。
冷たい土の感触が足の裏に感じ、勢いよく跳ね上がった泥水が着物の裾を汚していく。降りしきる雨が全身を濡らし、双子の冷たい手も合間って寒さに震えてしまう。
「どっちがミヨで」
「どっちがミコか」
「「わかる?」」
双子が満面の笑みを浮かべて、くるくると回っている。腕を掴まれたままの天野も、ガタガタと震えながら一緒に回ってしまう。
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