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「おい! お前達、相手は人間なんだ! 早く戻ってこい!」  ヒスイが少し声を荒げと、双子は「ちぇっ、つまんないのー」と言ってやっと開放してくれる。  目が少し回ってしまい、ふらつく足取りで縁側に戻ると「ここで待ってよ」と言ってヒスイが中に引っ込んでしまう。 「この人間の事も」 「好きなのかな」  双子の呟きに思わず「えっ?」と天野は二人に視線を向ける。 「ヒスイね」 「幸朗の事――」 「おいっ!!」  双子の声を遮るように、タオルを片手に戻ってきたヒスイが声を荒げた。 「ヒスイたら」 「こわーい」  そう言いつつも笑い声を上げ、逃げるように廊下を走り去ってしまった。  ふと、そういえば着物が全く濡れていなかったと思い至る。廊下も全く濡れた様子がなく、綺麗なままだ。  笑い声と足音が遠退いていくと、ヒスイがタオルを投げ渡してくる。 「すみません。ありがとうございます」  タオルを受け取ると、頭から拭いていく。  ヒスイは黙ったまま、自分の部屋の方へと向かっていってしまう。  双子の言葉が気になったが初めてヒスイが声を荒げた姿を見て、迂闊には聞けなくなってしまった。  苦虫を潰したようなヒスイの顔が脳裏に浮かぶ。幸朗という人物が、人間であることは間違いない。ただ、どんな人物でヒスイとの関係は不明のままだ。  ヒスイの表情から察するに、あまり聞かれたくない相手なのかもしれない。  天野は黙ったまま、ヒスイの後ろ姿を見送った。

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