72 / 185

72

「そうだな……まずは全部脱げ。途中で逃げ出されても、困るからな」  男が小さく笑い「まぁー、逃げ出す気などないだろうがな」と分かりきっているかの如く付け足す。  男の言う通りだ。逃げるつもりなど、毛頭ない。死をも覚悟で自分は来ているのだ。  ゆっくりと立ち上がると、震える指先でゆっくりと制服のボタンを外していく。  男は椅子に凭れ掛かり、その様子を一挙一動眺めている。  今ですら酷い辱めを受けているというのに、これは始まりにしか過ぎない。それでも羞恥は捨てさらなければ、大切な物を失うことになる。  僅かに残っていた自尊心までも、脱いだ衣服と共に捨て去ていく。 「綺麗な体じゃないか。白くて、きめ細やかな肌。まるで百合の花のようだな。しかし、それだけでは色気が足りん。俺が色を足してやろうと思うのだが……どうだ?」  男は態とらしく考える素振りを見せる。そんな芝居がかった姿に、恐怖で膝が震えだしてしまう。  噂は本当だったのだと嫌でも感じ取れた。これからこの男の嗜虐的趣向の餌食に、自分は自ら成り下がっていくのだ。 「……どうぞ、僕を好きに扱ってください」  男の足元に自ら這い寄り、投げ出している足のつま先に唇を寄せた。

ともだちにシェアしよう!