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「そうだな……まずは全部脱げ。途中で逃げ出されても、困るからな」
男が小さく笑い「まぁー、逃げ出す気などないだろうがな」と分かりきっているかの如く付け足す。
男の言う通りだ。逃げるつもりなど、毛頭ない。死をも覚悟で自分は来ているのだ。
ゆっくりと立ち上がると、震える指先でゆっくりと制服のボタンを外していく。
男は椅子に凭れ掛かり、その様子を一挙一動眺めている。
今ですら酷い辱めを受けているというのに、これは始まりにしか過ぎない。それでも羞恥は捨てさらなければ、大切な物を失うことになる。
僅かに残っていた自尊心までも、脱いだ衣服と共に捨て去ていく。
「綺麗な体じゃないか。白くて、きめ細やかな肌。まるで百合の花のようだな。しかし、それだけでは色気が足りん。俺が色を足してやろうと思うのだが……どうだ?」
男は態とらしく考える素振りを見せる。そんな芝居がかった姿に、恐怖で膝が震えだしてしまう。
噂は本当だったのだと嫌でも感じ取れた。これからこの男の嗜虐的趣向の餌食に、自分は自ら成り下がっていくのだ。
「……どうぞ、僕を好きに扱ってください」
男の足元に自ら這い寄り、投げ出している足のつま先に唇を寄せた。
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