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「その歳で勘付かんとは、とんだ箱入り息子だな」
鼻につく物言いに少しばかし癪に障ったが、青ざめた顔を下に向けるのが精一杯だった。
男の指先が頬から首筋へと流れ、全身が強張ってしまう。その色情を誘うような指の動きに、やっと意図を汲み取り全身に悪寒が走った。
「そうだな……お前次第では可愛い妹は諦めてやってもいい」
撫で回すような指が離れ、男が立ち上がる気配をみせた。
「この俺を満足させてみろ。お前に飽きたら、約束通り妹は俺の物だ」
「何を……すれば良いのですか?」
掠れた声を男に向ける。
聞かずとも薄々は勘付きはしていた。だからといって何も聞かずに自らの羞恥を晒すのは、引け目を感じる。
自分の犠牲で助かるのであれば、なんでもするつもりで腹をくくって此処に来た。この男に男色の気があるとは知らなかったが、自分の身一つで助かるのであればそれで良い。
視線を男に向ければ、男は愉快そうに顔を歪め見下ろしていた。
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