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 柔らかい黒髪が手に触れている感触に、さっきのは全て夢でこれが現実なのだと少しだけ安堵する。それでも妙に生々しい夢だったせいか、心臓はまだ早鐘を打っていた。 「元気になった」 「いつものお兄ちゃんだ」  二人の顔が一気に満面の笑みへと変わっていたが、ヒスイは何処か浮かない表情をしていた。そのことに不安が押し寄せてくる。 「ごめんね。後で遊んであげるから、ヒスイさんと二人にしてもらっても良い?」  ヒスイはきっと、悪夢の原因が昨晩の行為によるものだと思っているのだろうか。何か考え込むような、険しい顔つきで、視線を俯かせていた。 「約束だよ」 「嘘ついたら針千本だからね」  ミヨとミコは妖しげに笑うと、手を取り合って部屋を出ていった。本当に遊ばなかったら針千本飲まされてしまいそうな気迫に、思わず苦笑いを零す。 「……いい機会だから言っておく。簡単に約束なんてするな」 「えっ……」  昨日とは打って変わった、少し冷めたヒスイの声音に心が凍りついていく。 「いいか、あいつらも俺も妖怪。お前から全てを奪おうと思えば一瞬だ。人間なんて赤子の手を捻るほど簡単にねじ伏せられる。そうしないのは、俺もあいつらも少なからず、まだお前に情があるからだ」  一線を引くような物言いに、血の気が引いていく。何故それを今になって言うのか、ヒスイの意図が分からない。

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