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一緒に銭湯に行った際に何度も目にしてきたが、欲情の象徴を表した状態にはさすがに戸惑ってしまう。
「お前の手も借りるぞ」
そう言って恭治は天野の手を掴むと、重なり合った昂ぶりに手を添わせる。その上から恭治が自らの手を添えて、ゆっくりと動かしていく。
「ふっ……あっ……」
自分でしているようで、他人が誘導しているという不思議な感覚だった。先端から溢れだした蜜が流れ、動きを円滑なものへと変えていく。
「はぁっ……蓮介……」
恭治の辛そうな声に、天野は逸らしていた視線を向ける。恭治は眉根を寄せて、心底苦痛に歪んだ表情で天野を見下ろしていた。微かに目元が潤んでいるようにも見え、普段見せない艶っぽい姿に恭治の胸の内を垣間見てしまった気がしてならない。
妹の夫となるやもしれない親友と、このような不埒な真似をして良かったのだろうかと、遅かれながら気付かされてしまう。それでも今後の恭治の気苦労を考えれば、何も切り出せない。
恩にもならないかもしれないこの行為を恭治が望むのであれば、自分は甘んじて受け入れるつもりだった。
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