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ミエルンデス

林田琳(はやしだりん) 春からやらかした感ありあり………ああ、きっと、コレは現実じゃない! うん、現実じゃない。 今が8時過ぎてるとか…………ありえないよな? もう1回見てみよう。本当はまだ夜8時かもしんないじゃん? ふふ、ふふふ、 もう1回みる。 8時5分。 よし、テレビつけよう。 小〇さんが………やっぱり朝じゃん!朝じゃねーか! 俺は勢いよく起き上がり、ドタっ、「いてえ!」 と床に落ちた!俺のばかばか! 匍匐前進で進み、スーツを探す。 ああ、シャツしわしわ……あ、上着脱がなきゃわかんないか! テキパキと着替えしてるつもりなんだけど、何でさっき見た時間より時間進んでんの? 半じゃん! 遅刻じゃん! 飯とか食べてる時間ねえ! なんとか用意………って、携帯ない!携帯! 俺は枕元を散策。昨夜、携帯をいじってて、そのまま。 でも、ない?あれ? ベッドの下? 狭いベッドの下を見ると奥に見付けた。 何であんな奥に? って、そんな事考えている暇ない! うりゃー!と手を伸ばして携帯ゲット!だせっ。 で、時間みると………うわあー!もう、遅刻確定やんけ! 急いで部屋をでた。チャリを飛ばせば電車間に合うかな? 競輪選手ばりに漕いでると目線の先に何かが過ぎり、やばい!と思った瞬間はもう倒れていた。 「いてえ、!」 自転車ごと倒れて悲鳴を上げた。 今のなに? なんか茶色い……猫? 周りをみるけど、猫はいない。 ビックリして逃げたかな? まあ、ひいてなければいいか。 俺は気を取り直し自転車にのる。 ◆◆◆◆ あれ? 駅に着くと溢れかえる人々。 耳を澄ますと駅員が何か叫んでいる。 近くにいた年配の男性に尋ねてみた。 「なんかあったんですか?」 「ああ、事故だってさ。結構怪我人出てるみたいだよ?」 へ? 事故………。 じゃあ、電車乗れない? バスにかえるかな………って、バス停行ったら人が溢れてる。 ああ、もう!チャリとばす!マッハで走らせた。 ヘトヘトになりながら職場についた。 もう死ぬ………駐輪場に着く前に死ぬ……。 「林田先生!良かった!無事だったんですね!」 「はい?」 声に反応して振り返った。 で、目の前が真っ白になった。 ◆◆◆◆◆ フワフワした何かを掴んだ気がした。 ずっと前に触れた事があるような懐かしい感触。 なんだっけ? もう1回触ったらわかるかな? 手を伸して触ってみる。 うーん、何か違うような? さっきと手触りが違うなあ? もう1回…… 「林田先生……あんまり触ると」 えっ?誰? 近くで声がして、目を開けた。 開けたって事は閉じてたんだ俺は……… ボヤケた視界に茶色い何か。 ん? 手を動かすと俺の手を誰かが掴んだ。 「ほら、だから言ったでしょ?」 クスクス笑う女性の声。 この声って保健の天海先生。 じゃあ、保健室。 で、俺の手を掴んでるのは誰? じーっと目を凝らすと………目が合った。………げっ!徳川! 俺の手を掴んで見下ろす顔が整った高校生……つーか、俺のクラスの生徒。 徳川小麦。 小麦………名前は可愛いけど、 しかも、何も話さすじーっと見てる。 いや、俺見てんのか? なんか、視線でどっか追ってるし。 徳川はたまにこんな風に何かを目で追ってたりして不思議くんな部分がある。 「と、徳川?」 とりあえず、手を離して貰おう。 名前を呼ぶと俺に視線を戻す。 じーっと………て、照れますやん! 「あ、あの手……」 「………」 無言でポイっと離された。 「こ、ここって保健室?なんで?」 無言が続くとイヤだから話しかける。 「…………そうだよ。先生、良かったね。死ななくて」 「は?」 どういう意味? キョトンとなるけど、徳川は立ち上がり。 「もう大丈夫そうだから」 と謎の言葉に対しての説明はしていかなかった。 ま、マジなんなん? 残された俺。 「天海先生、俺何で保健室に?」 側で俺等のやり取りをニヤニヤしながら見ていた天海先生に話しかける。 「それは小麦ちゃんが林田先生をお姫様抱っこで運んできたから」 はっ? 「はい?」 思わず声が裏返る俺。 お姫様抱っこ? 「な、何で徳川が?」 「駐輪場で倒れたんで、って小麦くん言ってたわよ。林田先生……貧血ですけどね」 貧血………女子か俺は! それで徳川が? 「鈴木先生も側にいたんだけど、ゴタついてるから近くにいた小麦くんに頼んだみたいよ」 鈴木先生……あっ、確かに声をかけられた。 「でも、なんでゴタついてるんですか?」 「えっ?先生知らないんですか?朝の事故……ウチの生徒や先生も巻き込まれてて、学校はその対応してるんですよ?」 事故……そうだ!事故!だから、チャリで。 「でも、事故った電車って林田先生もいつも使ってるのに」 その言葉であっ……そうだったって思った。 いつも使う車両で寝坊しなければ乗ったんだ。 なんか………凄い確率で寝坊したんだ俺。

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