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ミエルンデス 3話
ハッと気付く、これって手を繋いで歩いてるジャマイカ!
「と、徳川…手、はなして」
そう言った瞬間、徳川に腕を引っ張られた。
ガシャン!
派手に何かが割れた音と同時で、俺は何が起こっているのか分からなくて、ただ気づくと手を繋ぐよりも先をいく行為……抱き締められていた!
はい?
いま、俺に何が起こってる?
理解できてない。データ処理が間に合わない機械のように俺はフリーズしている。
「わぁー!大丈夫か?」
バタバタとこちらに近付いてくる数人の足音。
何が大丈夫?
俺が?それとも徳川……?
「せんせ……怪我ない?」
頭の上から徳川の声が降ってきた。
徳川の声…… ゾクッてくる。
いい声だよな。イケボってやつ?
声優向きだと思う。
そのナイスボイスが耳元で聞こえるんだから、照れるジャマイカ!
「大丈夫!へへっ」
腕の中から逃れるつもりで勢い良く顔を上げた。
顔ちかっ!
数センチ離れた場所に綺麗な顔。
すご、徳川って綺麗なんだなあ。
唇とか女の子みたいなほんのり赤くて、この唇からあの声がでてんのかあ。
「せんせ?」
唇がそう動いて俺は覚醒!
うわっ、俺は何やってんだ!
慌てて離れようとしたら、
「先生危ないから動かないで!」
と叱られた。
why?
「徳川とリンちゃんかあ、どっちも怪我ない?」
生徒が側にきた。
また、リンちゃん呼びやがって!
俺はほんと、威厳ないよな。
「手が滑った……っていっても信じないよな」
焦ったような生徒。
何が?って思ったが足元みて理解した。
俺らの足元に粉々に割れた花瓶が……
はい?
「ありえねーんだけどさ、花瓶片付けようとしたら、まるで生きてるみたいに先生らの方に飛んだんだ」
頭をポリポリかきながら腑に落ちない顔の生徒。
いやいや、俺が腑に落ちないから!
「………いや、信じるよ。こっちに飛んできたから」
イケボな声で徳川がそういう。
「そっか………で、いつまでリンちゃんは徳川にくっついてんの?まだビックリしてんの?」
生徒がニヤついて俺をみる。
はっ!そーだ、俺は徳川にくっついたまま。
階段の側に大きな鏡があって、そこに映る俺と徳川は間違いなく抱き合っていた。
「ちが、大丈夫!」
割れた花瓶を避けながら離れる。
「そ、掃除しとけよ!」
俺はなるべく冷静を装い、その場を離れた。
そして、俺の後を徳川がついてくる。
あれ?そういえば何で徳川は俺と一緒に職員室に向かってんだ?
鈴木先生の言付けなら聞いたから着いてこなくてもいいのに。
「徳川、職員室に用あるのか?」
分からないなら聞くまでだ。
「あるよ」
「あっそ、」
しまった、会話終了してしまった。
俺の先を歩く徳川………やっぱでかい!
「なあ、何食ったらそんなデカくなんの?」
はっ?俺は何聞いてんだ!
徳川は立ち止まり俺の方を向く。
「小さいの気にしてんの?」
はう!そうきた?そうきました?
やっぱ、そう取られちゃう?
「別に気にしてないけど?ただ、徳川がデカイからさ……何食ってんのかと思っただけ!」
そう、俺は気にしてはいない。
服とかレディース物がすんなり入ったり、いいなって思うものは補正しなきゃならないけど、全然……ほんと、全然平気。
「可愛いからいいんじゃない?そのままで」
ポンと徳川の手のひらが俺の頭の上に乗る。
ポンポンと……
こ、これは女子が喜ぶシチュエーションの頭ポンポンじゃないか!
俺は何故それを生徒にされているのだ?
しかも男に。いや、女の子ならまずいか……つーか、いないし!男子校だもん!
女子は先生以外存在しない。
「徳川、馬鹿にしてんのか!」
と強く言ってみる。
「してないよ?正直な感想言ったまでだよ、それに……」
徳川はそのまま間をあける。
「それに?」
「顔、真っ赤だよ、せんせ?」
そう言って微笑む徳川。
顔赤い?………うそん!
「あ、赤くないし!しょ、職員室いかなきゃ!」
赤いと言われたら顔が熱いのに気付く。
くそ!俺のばか!女子か!頭ポンポンで赤くなるとか女子か!
徳川を追い越し歩く。
◆◆◆◆◆◆
「林田先生目覚めたんですか?」
職員室に着くと鈴木先生が声をかけてくれた。
「はい。すみません……迷惑かけてしまいまして……あの、それより授業」
頭を下げながら謝る。
「生徒と先生達がまだ病院なので、授業どころじゃないですからね。」
鈴木先生のいう通り、職員室には数人の先生だけ。
校長や教頭は病院らしい。
「林田先生も体調良いなら手伝ってください」
「はい」
返事をして徳川がまだ後ろに居るのを忘れていた。
「徳川、用事は?」
「まだ……」
徳川はじっーと俺をみる。
なんだよ?そんなに見つめて、また頭ポンポンの事を言うつもりか!
「徳川、さっきはありがとう。林田先生運んでくれて」
「いいえ、林田先生軽いから」
そう言って俺をちらりとみる。
わ、悪かったなチビでガリで!くそ!
「徳川、お前も帰っていいぞ?」
鈴木先生がそう言うけれど、
「まだ、用事終わってないんで」
と断わる。
「用事って?」
俺は用事が何かが気になる。
「林田先生です。………先生、気をつけてないと危ないんで」
は?俺?
キョトンとなった瞬間。
パンッと何が破裂したような音がした。
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