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side W

Side W  昔から我慢が嫌いだったワケ。抑えるのも苦手だった。自由、破天荒、自分勝手、好きに呼んだらいい。 「鷲、宮、せんぱ…!」  下で喘ぐ年下の男。褐色の肌、癖のある髪、大きな瞳、厚ぼったい唇。日本語とは縁の遠そうな身形をして紡ぐ言葉はオレのコト。  最初はシュミの悪い遊びかと思った。ウサギが入った飼育小屋にいたもんだから。ひでぇコトするなって思って近付いて、でもウサギ抱き上げて笑うソイツの姿見て、コイツは望んでここにいるのだと悟った。細いブラウンの手が真っ白いウサギと、真っ黒い瞳が真っ赤な目と。何しに来たのか忘れた。そのウサギ並みに真っ白になった頭の中を必死に拭っていたらコイツは胸に兎を抱いて、笑ったんだ。  それからだと思う。コイツはこの身形だから目立つ。オレの中の偏見だの価値観だのをみるみる変えていく。オレがオレじゃなくなる。ヤバい。下に敷いたソイツの胸を強く押す。シャツに皺が寄る。ソファが軋んだ。オレの身体が引き攣って、仰向けのソイツは涙と涎をだらだら垂らして大きく反射させるガラス玉みたいな目を閉じる。  オレは女の子が好き。女の子の前なら我慢が利く。ワガママも何とか抑えられるしむしろワガママを聞いてやるのがオレの仕事。誰もがカレシにしたがる男、それがオレ。  乱れた制服を直していく。まだソファに寝たままのソイツは肩で息をして、腕で顔を隠している。つまんね。恐れるような相手なんかじゃないだろうに。  

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