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Side A

Side A  放課後の校庭を見下ろすのが好きだ。サッカー部が部活を始めてる。備品の用意、準備体操、軽いミーティング、それから練習メニューへ移っていく様を見ているのが楽しい。おれは身体が弱い。そして成長もあまり期待できそうにない。父さんは190㎝以上あるけれど、おれはせいぜいこのまま順調にいっても180㎝届くか、もしくは175㎝も行かないかもしれないな。何よりも先に外見から入ってしまうのは仕方ないことだと思う。それは憧れだけの話ではなくて、人付き合いとかも。 ―おい、小松どうした?―  おれがびっくりした。校庭に広がっていくサッカー部。部長と思しき人が大声で訊ねている。小松先輩なら多分あそこだ。小松染先輩は少し変わった人だ。背が高くて、スタイルが良くて、優しくて、穏やかで、かっこよくて。でも軍鶏の飼育小屋に関心を抱いていておれとの出会いも軍鶏小屋だった。いつもここにいるけど何してんの?。おれがそっくりそのまま返したい質問をされて、それが初めての会話。 ―メニューまでには戻るそうです―  後輩部員が伝言を預かっていたらしい。 「重恋くん、ピアス空けたんだ」  教室の外から声がして、そして珍しくおれの名前を他人から聞いたものだからビックリした。そして彼がおれを知っているってこと。覚えていること、認識してくれていたこと、全てに。けれど多分からかいたいんだろう。そして、先生に言うんだ。ピアスは校則違反ですって。だって彼は生徒会の副会長だから。 「こ、れは…」  穏やかなカオをいつも崩さないし、こうして話し掛けてくれたけど、彼だって結局は。

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