Side W 　 　寝取り野郎が。あのまま保健室で何スる気だったワケ？お前はきちんと答えられるの？ 「エレンチャ～ン」 　教室いるじゃん。っつーかまじで事後だったらシメる。放課後の待ち合わせは遅刻が原則。待ち合わせ？待ち合わせっつーか、お呼び出し？…だよな。保健室ってだけでヤバい香りするのに何シてたんだかな。教室には戻って来られたみてぇだし。あの地味イケメンのクソガキは後でどうにかするとして、寝取られ野郎のレッテルは剥がさないとイけないわけ。 　美少女みたいなカワイイ名前を呼んでやったら怯えた顔を隠そうともしないで、まじお前、ほんとかわいくない。 ＊ 「っあ…！ん、っく」 　こいつまじで腰細い。ちゃんと食ってる？チェックの感じ中は大丈夫。何が大丈夫って出されてはいないってこと。あのガキ遊び慣れてなさそうだし。 「ぁっ、鷲…みや、せ…！」 「何」 　呼ばれたから返事してやる。オレはやさしーから？大きな目が涙できらきらしてんのな。両腕広げてシーツに爪立てて、上体起こして口なんて開けっ放しでだらだら涎垂らしちゃって。 「ゴムの付け方なんて知らないカオしちゃってまさか…ね？」 　優等生の皮を被って地味に装ってあのイケメンも結局はケダモノよ。下半身に嘘は吐けないって。でもオレがきっちり拓いたこの身体の美味しいところだけ頂いちゃうってさすがにオトコとしての品格のモンダイじゃない？ 「ちがっ…っん、ちが…」 　何？血？どこも出てねぇけど、何？腰強く押し付けたら大きく息吐いてそれから浅い呼吸を繰り返す。唇を噛んで、唾液で濡れた厚ぼったい唇が光った。もっと繋がりたいって思って。 …。…。…？…、…。 　思考停止。腰の動きも止まってしまった。でもぎゅうぎゅう締め付けてくんのな。チョコレート色の腹が上下に動いて、ああ食いたいなて思ったし実際今食ってる。いや、そういうんじゃなくて。なんだろうな。もっと。もっと深くなりたい…？いや、割かし深めに繋がってるんだけど？オレ、粗チ×(ン)じゃないはず。だって歴代カノジョと今カノ7人に前のカレシより…とか言われたし。マウスサー…はえっちな方か、リップサービスじゃなければ。 「…っせ、んぱ…っも、ぁ」 　なんかいつもより、なんか、違くない？お前今日よく喋るね？どうしたの？ 「も…、やぁ…や、め…ッ」 　シーツの上に投げ出されて皺を寄せる両腕を掴む。なんで？何をやめてほしい？コレ？気持ちいだろ？お前だっていつも出してるじゃん？んでねだるじゃん？オレやさしーからそれ叶えてんじゃん？何が不満よ？ 「あ、あ、いゃ、…ッ」 「拒否すんなって」 　お前は後輩なの。それでオレ先輩なの。オレ先輩なんだよ、分かったかバカ小松。 「それとも、何。あのイケメンくんに抱かれ倒されちゃった？」 　そういう感じないけど。中の締まりは別にフツー。異常なし。あのイケメンくんがポークなビッツでもない限りは。身体中にも妙な痕ないし。 「っれいっおっ…！んぁっ…かん、け…」 　あああああああ。聞きたくない。聞きたくないよ～。聞きたくない。ロマンがねぇな。童貞かな。童貞だな。ヤってる最中に他人の名前出すなって、まじ萎え。容赦しないで打ち付けまくって中に出すわ。あのくそ地味イケメンはどんなカオして悔しがるの？見たいわ、今度参加させてよ。いいでしょ、先約はオレだったんだから。 「はっ…、は、は…ッ」 　オレが付けたピアスがキラキラ光ってる。それがなんだかすっげぇうぜぇ。なんでかね？お前の持ち主オレだよね？なんで？似合わないピアス付けさせてさ、オレのだって証明したよね？なんで持ち主に喧嘩売るの？でもそれと同じくらいきらっきらしてるコイツの唇ね。なんでそんな綺麗なの。なんで？うざいんだよ。あれもこれも全部オレに喧嘩売ってない？なんでいつもと違うの？何が違うの？分からない。そういう痕跡ないけどもしかしてガチのマジでいただかれちゃったワケ？なんとなくそう思ったし別にマジじゃなくてもそれ口実にしちゃうかレベルだったのに、なんか… 「も…ぃ…っや…、あ…」 　濡れた唇から出る声甘いし、なんか耳に纏わりついてオレのおっぱいじゃないところがふわっふわするし。光るベロ、なんか頭きんきんするし。 「あいつの舐めたとか？」 　なんで唇に目がいくんだろうな。フェ×してほしいのかオレ？でも唇が気になる。何、オレはコイツにフェ×(ラ)でもさせたいのかな？いやでもやだよ、男のフェ×(ラ)顔とかもう勘弁。あ、見なければいいのか。いや、コイツなら…？う～ん。 「お、れな…ッ」 　やっぱ答え聞きたくねぇわ。ぬとぬとしてるコイツの口に指突っ込む。オレやさしーから毎日爪手入れしてんの。女と付き合うってのは大変なんだよ。そういう配慮も込みでソンケーしてくれよ。イケメンでも地味であんな童貞臭い男やめておけって、清潔そうではあるけどさ。口の中掻き回して苺のムースみたいなベロがオレの指に絡む。唇がまたぴか～って光って何か塗ってるの？そういうの見たよ、サヤちゃんがいつも唇につけてるやつ。グロテスク？みたいなやつ。ポテチ食った後みたいなやつ。相手女？まさかね。 「もしかしてさ、」 　なんだろうね。どうしていつもと違うの。オレの知らないオレのコトを晒しておいてさ、やめてよね。 　唇をなぞる。食べたい。噛んでみたい。口の中で転がしてみたい。歯が痒いよ。口の中が暇なんだ。助けてくれよ。 「キス、された？」 　キスオレさせてねぇししてねぇもん。だから誰かが手ぇ出したんならそれこそコイツの初めてじゃん。そうだよな？ソウイウ意味のキス、他のやつに、今までさせて、ないよな？ 　擦り切れた薄汚れた唇だって小松は前に笑って言った。さくらんぼの枝結べたらキスが上手い、すっげぇくだらねぇ。あいつの言い方、声そのままに思い出して急にイヤになった、小松はマジで性格悪いから気にするコトじゃねぇのにさ。びくってしてコイツが初めてきちんとオレをオレと認識した上でオレを見た。キスくらいなんだよ。オレだって出来るわ。擦り切れて汚れたこの唇でさ、お前も汚れろよ。 「い、っやぁ！いや、いやです、い、…ッ」 　声でけぇよ。うっせーわ。オレだってイヤだよ。コイツの顔を掴む。すっげぇ柔らかい綺麗な肌してた。怖いなって思った。もしオレの指の跡ついたら。 「いいから」 　めっちゃ嫌がられて首振られて顔逸らされて。でも固定するんだ、口元掴んで。オレだって嫌なんだって、分かれよ。男同士で、しかも相手お前なんて。でもこれは消毒なんだよ。もし、もしよ？もしあのくそ地味イケメンに唾つけられたんなら、文字通りオレが唾つけ直さなきゃだろ？それでいいんだよ。そういうことなんだって。 「いやぁああ！嫌です、嫌、嫌、いや！」 　包み込まれてるカンジだった。吸い付くみたいだった。撥ね返すみたいだった。止まらないな、って思った。まだ離したくないって思って、顔の横に衝撃が走った。耳の少し前、ガリガリってした。耳にも引っ掛かったし。は？って思ってソイツみたら、ぼろぼろぼろぼろ目から涙零れまくって雨みたいだった。でもなんかすごい美味しそうな果実みたいで。そんなに嫌だったのかよオレのことって、フツーに傷付く反面、やったわって思った。オレやさしー先輩のハズなのにな。 「初めてかよやっぱ」 　コイツは首を振る。どういう意味？こういうコトするヤツ信じらんれないって言いたいの、それとも初めてじゃないってコト？どっち。どうせ前者。 「初めてじゃ、ない、ですッ…」 　…、もうキレたわ、あのクソガキ。