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Side T

Side T  築城クン、よく見るとめっちゃくちゃイケメンだよね~だ?何この茶番。くっそつまんな。僕を見かけるなりクソガキ先輩が馴れ馴れしく首に手を回す。隙をついて殺すつもりかな。この人正気なの?よく目立つし異性人気すごいこの人が大声でそんなことをいうものだから周りからの視線が痛い。今登校時間のピークで、この人はいつも遅刻って噂届いてんだけど。どうしてこの時間にいるの。  僕の伸ばした前髪に突然触れてきて掻き上げられる。変な薬品混じりの人工的な花みたいな匂い。整髪料じゃん、サイアク。 「何、するんですか!」 「こっちの方がキレーなカオ見れて似合ってるよ」  前髪を片側に上げて流すような少し立体感のあるセットにされて、僕はそんなの望んでないんだけど。頭の悪い人間は必ず一定数この世に存在するけど多分どころか確実にそっちの側の人間だ、こいつ。偏差値35、それでも気の良いヤツ、地頭のいいヤツ、家庭を支えてるヤツ、夢を追ってるヤツ、それぞれいて他の奴等はバカだの落ちこぼれだのDQN(ドキュン)言ってるけど僕はただの偏見だろうなって思ってたのに。 「築城くんって実はイケメンだったんだね!」  脇を通りかかった女が言った。気安く話し掛けんな。お前覚えてるぞ、今まで随分とゾンザイだっただろ。くそビッチが。この世の悪を全て集めたみたいな笑みで僕を見る。わしゃわしゃと髪を乱してボサボサの寝起きより作為的にボサボサな頭髪のままこのバカ男を無視して教室に向かう。いつもきっちり髪を整えて登校するから教室に入った途端妙な視線が集まった。僕はそういうのが嫌だったんだけど。

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