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Side T

Side T    怖いんだよ、えらそうなこと言って、僕は。彼の口から別の人の名前が出てくることが。だから事実から背を向けたくなったのに、彼はかわいいカオして僕を見る。分かるよ、言いたいこと訊きたいこと、あるんだろ。 「冷生(れいおう)、おれ…あの…その…」  かわいいな。出来ることなら最後までやってしまいたかった。でも僕はあの強姦魔とは違うから。段階を間違いたくないんだ。 「気持ちが落ち着いたらで、いいから」  レモンティーを淹れて彼の前に出す。生徒会室まじでこんなんでいいの?ありがたいこった。 「好きな人の、こと」  僕ってはっきり言わない辺りがもう答えなんじゃないかと思う。本人を前にして言えないとか?僕はもう告白して、性的なおイタだってしたのに?もう何となく分かってるけどそれでも期待しちゃうんだよ、ごめんね、こんな情けないザマで。 「え~っと、おれにもよく分からなくて」  僕が好きかそうじゃないかってことが?それとも好きな人のこと?気になる人ならいるって意味で合ってる? 「気には…なる、けど…」  ビンゴじゃん。これ突き詰めちゃっていいの?どうする?パターンが樹形図みたいに広がっていく。彼を包囲する。ここで何を言うのがベストなの? 「でも…」 「好きか、っていうと分からない?」  誘導尋問みたいかな。君から好きって言わせたいワケじゃない。好きになってもらえればいいの。言葉なんて後からでいい。中身の伴わない言葉もセックスも物理運動で肉体的快楽は脳味噌ぶっ壊すだけ。僕は君について思考停止したくないだけなんだ。 「う、ん」  ゆっくり頷く重恋くんにまたキスしそうになる。きっと言ってる相手は僕じゃない。分かりきって、実質フラれたも同然。でも一度は僕に身を委ねた彼なりの考えも、尊重したい。 「そっか」  迷ってるから言えないのか。僕がまるで拒否の選択が無いみたいに迫って、これじゃああの先輩とほぼ変わらない…待って、重恋くんの好きな人って…でもそんな、まさか。 「重恋くんが好きかもしれない人ってさ」  重恋くんは僕を見はしなかった。きょろきょろ大きな目が動く。 「鷲宮先輩?」  重恋くんはがばって顔を上げて、全力で首を振る。違った。それならよかった。それなら安心。あの先輩でないなら。 「小松先輩」  ?染サンがどうした?何か急用思い出したの? 「ん」  もじもじして、うっ、って重恋くんは困ったカオした。どうした? 「おれの好きかもしれない人、小松先輩」  コマツセンパイ?誰?綺麗な人?男?女?小松?すっごい聞き覚えあるんだけど、それこそまさかね?この辺小松姓、珍しくないし?

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