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Side T

Side T  それが重恋くんの答え、なんだね。 「おめでとう、悔しいけど、重恋くんが選んだなら僕、応援させてもらうよ」  僕は今日という日のために笑顔を貼り付ける練習を重ねていたのかも知れないね。でも重恋くんのカオは曇ったまま。どうして?僕上手く笑ってない?怒ってるように見える? 「冷生(れいおう)、でもこれからも…」  重恋くんの声が消えていく。僕もさ、そんな純粋で善人じゃないんだよ。理性で抑えるのにだって限度はあって。君は酷なお願いをするんだね。傍に居られればそれでいいって答えは僕にはないんだよ。そんなの失わないことを選んだだけ、手に入れたいのは大前提で、リスクを負わなかっただけじゃん。 「うん、変わらず仲良くしてよ、重恋くん」  今までの人生は全て練習なんだろうか、君の傍にいるための?まさかね。僕のこういう汚いところ、僕はきっと君に見せられない。 「よぉ、…重恋」  カレシが教室に来て、少しクラスがざわめいた。 「じゃ、次の授業で」  ほら、僕ってこういうキャラじゃん?重恋くんが困ったカオをした。行かないでって感じの。君が選んだカレシでしょ、どうして笑わないの、どうして僕に縋る目するの、どうして呼び返してやらないの。  廊下を勢いよく飛び出したら目の前が真っ暗になって背に腕が回り、受け止められる。制服的に男じゃん。 「ごめんね?急いでた?…って冷生ちゃんか」  ガキにするみたいに両肩に手を置かれて前髪を直されて顔覗き込まれて相手がもう声で染サンと分かった。いつもと違う柔らかい声出して、僕と分かった途端いつも調子に戻る。いつもの調子。普通の、ヘラついた声。 「教室居づらくなっちゃったね」  その一言が牽制のように思えて僕は浮かんでいた様々な言葉を続けられなかった。 「何か用でもあったんですか」  この階は2年の教室棟だからこの人たち…鷲宮先輩は別としても染サンが来る理由は? 「うん、ちょっと」  だからそれが何かって訊いてるんです、とは言えなかった。僕めちゃくちゃクソガキじゃん。染サンの動向が気になるとか。変なイミじゃなくて。 「昨日女マネの子に返し忘れたモノ、返しに来ただけ」  僕の内心を読まれているのか、やっぱ僕はクソガキだ。昨日と同じ冷えたトーン。これが染サンか。重恋くんはこの人のどこを見て惚れたのかな。 「冷生」  呼び捨てはいつぶりだろう。姉貴との交際期間は呼び捨てだった。でも柔らかい声だった。 「余計な詮索するなよ」  怒ってる。何に対して?この人は何に対して怒ってる?

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