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Side T
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最悪だよ。会議室で男性教師2人ずつ挟んで事情聴取。あらいざらい話さなきゃならないわけ。正気かな。何から話せばいいのか、話していいのかも分からないんだけど。
「小松さんの怪我の手当だけでも先にしていただけないですか」
場を持たせるためなら僕はまた演じるよ。僕も僕で奥歯痛いんだけど抜けてないよね、まさか。舌で触れた感じきちんと生えてるし。先生たちが少しざわついて、隣に座ってた男性教師が染サンを保健室に連れて行った。鷲宮先輩容赦ないな。染サンの顔が少し腫れはじめていた。
「正直話せることそんなないです」
ばつの悪いカオしてる鷲宮先輩と俯いている重恋くん。日頃から素行が良くて、鼻にティッシュ詰めてるけど話せそうな僕に先生たちからの意識が向けられる。
「少なくとも僕からは」
喋る度に染サンに殴られた時のか鷲宮先輩に殴られた時のか分からないけど口の端が痛痒い。
「後日落ち着いてから個別で話した方が良くないですか」
なんで僕ここにいるんだろ。数学の授業してなかったっけ。それに僕は部外者で、クラスメイトが変なのに絡まれてるのに首突っ込んだだけで。鷲宮先輩と染サンに関わるな、先生のありがたいお言葉は正しかったとしか言いようがない。
事情はともあれ状況だけ説明してくれないか。そこそこ世話になった先生が穏やかに、でも明らかに困った様子で言った。白髪とシワ、増えたな。最悪だよ、ホント。鷲宮先輩何考えてんだろ。重恋くんは大丈夫かな。大丈夫じゃ、ないかもね。でもそれは鷲宮先輩もかも。それから染サンも。何考えてんだろ。訳分かんない。っていうか染サン、謹慎中じゃないの。痩せてたし顔色悪かったし何にそんな追い詰められてるのさ。暴力に訴えてくるなよ。重恋くん、失恋どころじゃなくない?
喋らない僕含む3人に痺れを切らしたみたいで教頭が溜息をつく。いつの日だか夢みてた教職員になりたいってやつ、段々そういうのも薄れるよ。僕がその原因のひとつに自分でなるなんてね。でもやっぱり2人の先輩に関わるなっていうありがたい助言は正しかった。事勿れ主義の職員室の在り方が大っ嫌いだったけど、それはひとつの妥協だったのかもしれないね。僕はガキでバカなんだな、って思わざるを得ないや。
会議室の中で向けられる僕への視線。そうだよね、素行不良児と、もしかしていじめられてるの?ってカンジの控えめそうな生徒とそこそこ表に立つことある僕じゃ必然的に僕に求めてくるよね、僕だってそうするもん。重恋くんだって成績いいし真面目に掃除とか行事に取り組んでるのにね。生徒会立候補して学業成績も悪くなくて行事にも授業にも積極的で部活に入ってないのがちょっと気に入らないくらいの僕の方が先生は頼れるんだよね。考えてたら会議室の扉開いて先生に連れて来られた姉貴の姿。なんで?って感じ。母さんか父さん、兄さんじゃないの?なんで姉貴?怒ってるみたいで僕をキツい顔で見た。もともとキツい顔してるけど。それよりどうして姉貴なの。もう帰っていい、って言われて、姉貴に引っ張られるように退室させられる。姉貴が頭を下げて、僕の頭掴んで無理矢理頭を下げさせられる。嫌な予感がする。でもどういった嫌なのかも想像出来ない予感。親戚が倒れて親来られないとか?それともこれからそのまま婚約相手に挨拶に連れて行くとか?それか買い物付き合わせられるとか。長いから嫌なんだよ、どっちが似合うだのどっちが良いだの選択迫ってくるのも。
姉貴の車。高級車だ。真っ赤でメタリック。内装は真っ黒。趣味悪い。染、冷ちゃんのおにいちゃんになるから。乗り込んでシートベルト締めてすぐ。姉貴は僕を助手席に乗せたがらないから決まって後部座席に乗る。相変わらず香水がきつい。聴覚は意識を嗅覚にとられて、多分マトモじゃない。何言ってんだろ。つくづくおめでたい人だ。
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