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第1話 秘密のお仕事
初夏の夕方。冷蔵庫を開けた私は、用意しておいた蒸し鶏をそぎ切りにして生野菜の上に盛り付ける。かけるのはポン酢をベースに大根おろしも加えたさっぱりタレ。オクラとしらすとミョウガを和えた小鉢。ご飯と、お味噌汁はなめこにした。暑くなって食欲が落ちると酸味が欲しくなってしまう。
そうこうしているうちに玄関が開く音と、続いて規則的な足音が近づいてくる。
「秋則叔父さん、ただいま」
「おかえりなさい、伶くん」
明るい笑顔で帰って来た愛らしい少年に、私はにっこりと笑みを浮かべた。
彼は日野坂伶。現在高校三年生だ。
姉の子供で、ずっとこの近所に住んでいたのだが、去年の春に急な海外転勤が決まりここに下宿する事になった。
元々子供の頃から一緒で、とても慕ってくれる甥のたっての願いに私は二つ返事でOKをし、姉も「あんたならいいか」と言って預けてくれた。
だからこそ言えない。私の抱える秘密は、誰にも知られる訳にはいかない。
部屋着に着替えた伶くんがリビングに入ってくる。夏になり、少年らしいハーフパンツにTシャツ姿。顔にかからない程度のボブは白い首筋が露わになっている。項まで綺麗だ。
「叔父さん、お手伝いするよ」
「えっ、でも……」
「お願い、させて。昨日締め切りで、あまり寝てないんでしょ?」
心配するように、大きく愛らしい瞳が細められる。その様子に、私の胸はキュッと切なく締まっていく。
「いつもの事なので、大丈夫です」
「もぉ、そんな事言って駄目だよ。叔父さんは僕の自慢なんだから、いつまでも若くいてもらわないと」
伸びた手が目の下に触れる。優しい手つきからは気遣いを感じて、思わず嬉しく微笑んでいた。
「若いなんて。私はもう40間近で、十分おじさんです」
周囲の人は私を若いと言う。美人だと言われ、長年編集をしている親友などは「顔を出せばもっと本が売れるのに」とぼやくほどだ。
けれど私自身はそんなに特別とは思っていない。それに、顔を出すのはとても恥ずかしいのだ。いいことがあるとも思えないし。
伶くんは困ったように苦笑している。その手はずっと私の頬の辺りに触れたままだ。
その部分が、熱くなっていく気がする。そんな体の反応に抵抗したのは、私自身だ。
伶くんの手に触れて、そっと降ろさせる。そしてニッコリと微笑んで、キッチンにある小鉢を二つ持たせた。
「では、お手伝いをお願いしますね」
「……はい」
何かを言いたげな間と瞳。でも、聞けない。そこから何かを察する事はできない。どうしたって自分の都合のいいようにしか解釈しないのだから。
お風呂にも入り、伶くんも部屋に引っ込んだ。リビングの照明を落とした私は自室に戻り、パソコンの電源を入れた。
「ふぅ……」
目の前で立ち上がるワープロソフトには、書きかけの原稿がある。その続きを、書いてしまわなければならない。
私は作家業を十年以上している。表向きは趣味の料理をメインにしたファンタジー小説を書いている。これが、昨日終わった仕事だ。
それは表だが、メインではない。メインは、こっちだ。
カタカタと規則的にキーボードを叩くうち、私の意識も画面の向こうへと囚われていった。
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「臣……あぁ! お願い、焦らさないでぇ……」
薄暗い室内に俺の喘ぎ声が響く。俺を攻め立てる友人は俺の昂ぶりを握りしめたままリズミカルに上下に扱き、溢れ出た先走りを塗り込めていく。
「だらしないだろ、慎二。あーぁ、俺の手がべっとりだ」
「はぁん! いわ、ないでぇぇ」
裸に剥かれた俺の股座でだらしなく溢す昂ぶりは、もうギンギンにいきり立ってすぐにでも解放を求めている。目の前の臣はそんな俺の痴態を見て、楽しそうに口の端を釣り上げるのだ。
「いい姿だよな、慎二。大学じゃ女の子にキャーキャー言われてるイケメンが、本当は男にチンコ握られてお漏らしだもんな」
「ひぅ! はぁ、そん……んぁぁ!」
「ほら言えよ。お前はどんな人間なんだ? 言えばお前の尻穴も掘ってやるよ」
見下す臣の視線にゴクリと喉が鳴る。言われた途端、尻奥がジンと痺れてくる。
あぁ、ここに欲しい。尻の奥でジクジクと疼くここに、太く熱く硬い肉棒を突き入れられたい。容赦なく突き潰すようにねじ込まれて乱れて感じたい。
「言えよ、慎二!」
「はぁあ! お、俺は男にチンコ握られて我慢汁流しながら腰振ってる淫乱男です! 尻穴ほじられて感じる変態尻マンコ野郎です!」
途端、グリグリっと先端の恥穴を指でほじくられ、俺は気持ち良く吐き出した。
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書きながら、私の体も熱くなる。我慢出来ない衝動が駆け上がって、思わず手を止めてしまった。
「……っ」
だめ、こんな事はいけない。
思えば思う程に止まらない。前を持ち上げる硬い熱源を感じてしまう。尻の奥も、疼きそうだ。
机の前に座ったまま、私はそろそろと己の昂ぶりを取り出す。
既に半分以上勃ちあがり、トロトロと先走りを溢す肉棒を握るだけでブルッと震えが走った。
「はぁ……あっ……はぁぁ……」
緩く握り、上下に扱けば簡単に勃ちあがり、カチカチになっていく。先走りを塗り込んで滑りを良くし、次々と溢れるものも同様にしていく。
――叔父さんの変態。こんなに溢して
妄想の中でなじられる。それはいつも伶くんの声と姿。
「あっ、だ……てぇ……」
止まらない。気持ち良くてたまらない。
――本当にこらえ性がないね
「ひうぅ! はっ、ごめ……なさ……あぁ! もっとしてぇぇ」
手の動きが速くなる。妄想の伶くんが私のはしたない肉棒を握り、上下している。見上げる蠱惑的な瞳に吸い込まれる。あぁ、唇が今にも触れてしまいそう。
「あぁ、伶……くん……っ、伶くん、もっと犯してぇ」
――しかたないな、淫乱叔父さん。どうして欲しいの?
「あっ、先……ぽ、ほじほじして……あぁぁぁぁ!!」
ヌルヌルと先端を包み込まれて撫でられながら、もう片方の手で先端の恥穴に爪を立てられる。途端、突き抜けた激し快楽に背がしなりビクビクと震えながら、私は白濁を吹き上げた。
溜まっていた分それは粘性が強くて、ドロドロになっている。
「あっ、あっ、あぁ……」
余韻が長くて、何度かビクビクしている。緩んだ唇から唾液が溢れ落ちていくのも構わない。
――まったく、こんなに汚して。掃除してよね
白濁で汚れた指を突きつけられて、私は美味しくそれらを舐めた。塩っぱくて、すえた男の生臭い匂い。これを嗅ぐだけでまた興奮してしまう。駄目だと思っていても、淫乱な体は燃え上がってしまう。
パソコンの前から移動して、私はベッドのサイドボードからローションとゴム、そして小型のローターを取り出した。棒状のシリコンローターは細身で、スイッチを入れれば震える。
ゴムを被せたローターにローションをまぶし、足を広げた私はそれを尻奥へとゆっくり埋め込む。
「はぁ……あっ……はぃ、るぅ……」
入口を擦るだけでゾクゾクと期待に奥が熱く痺れる。疼いてたまらない。
ズボンもシャツも脱いで、たまらず空いている方の手で乳首をこね始めた。刺激になれた乳首はあっという間に硬くなってツンと尖り、押し込めばジワジワ快楽が広がっていく。
「あぁん、あぁ、だめぇ……伶くん、気持ちいぃ」
お尻をほじるスピードが上がる。
私はローターの電源を入れた。途端、尻の奥で震える棒が暴れて私の中を擦りつける。
「ふぁあ! あっ、イッ……いぃ! いぃのぉ、お尻ぃ!」
ジュブジュブと音がしそうな程に出し入れをしながら、指で乳首を捻りあげてヒィヒィ鳴いて、私はビクンビクンと体を跳ねさせる。
「あぁ、今日は激しい、はげしぃのぉ!」
――変態だよ、叔父さん。こんなのが気持ちいいの?
「きもちいぃ! きもちいぃのぉ!」
――じゃ、見ていてあげるからこのままイッてごらんよ
私は卵形ローターも取り出し、それを弱い肉棒の先端に押し当ててスイッチを入れた。
「いひぃ! ひあぁ! あぁ、らめぇぇ! イクぅ! イクのぉぉ!」
たて続けに二度目を放った体は流石に弛緩した。
体に力が入らない。ブーブー音を立てながら近くに転がる卵形。尻奥に埋まり、未だに震えている棒状ローター。それがイッている前立腺を時折擦るから、それだけでも出さずにイッてしまう。
「あっ、あへ……あ……」
いけない。そう思いながらも止められない性癖。止まらない淫乱な体。誰に慰められた事もない体は自分だけで熱せられ、妄想だけで果ててしまう。
「あ……かく、さ、なきゃ……」
こんな姿を伶くんが知ったら、どう思うのだろう。子供の彼に犯される妄想に焦がれているんだと知ったら、どんな顔をされるだろう。
だめ、嫌われたくない。可愛い私の甥っ子。これは妄想だけで、現実にはならない。これはここだけの秘密で、表には絶対に出さないのだから……。
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