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第10話 梅雨はすぐそこに 四
梅雨はすぐそこに 四
海そばの次の家はなかなか決められなかったのに、東京の引越し先は簡単に決まった。
雄介に都合良く、草太の両親の家から遠くない所のアパート。アパートとはいえメゾネットだと話す草太に僕は一番気になった事を聞いた。
「 僕は別に借りようか?」
「 どうして 」
「 だって、男二人で、雄介もいるのに……」
「 今までだって同じだ 」
「 でも、今までは家から遠かったし 」
「 馳の親の家からは近かったじゃないか 」
「 それは、そうだけど 」
「 なんで一緒に住めない?
知り合いの不動産屋が仲介したから、事情を話して男二人で断られることはない、勿論雄介も一緒に住むことも知ってる 」
「 草太のおばさんは?」
「 お袋?俺たちが住むことになんか関係ある?雄介の迎えと俺らが帰るまでの面倒は頼まなきゃならないけど。
馳、本当にごめん。
恵の再婚相手に雄介がまったく懐かないって彼女は言うんだ。お袋に言わせるとその相手の方が恵のお腹に男の子がいるとわかった途端雄介を蔑ろにしだしたって言うし。
雄介にとっては良くないだろ?
だから俺が引き取る選択しかないんだよ 」
「 そんな、雄介と一緒、そんなこと気にしてない!そんなことじゃないんだ 」
僕の気持ちを吐露すると草太の家のおばさんや恵さんが僕を見る目や、知り合いが多い地域に住むというリスクの話をしなくちゃならない。草太を困惑させる、言えない話は二人の間を埋めるべくもなく平行線を辿るが、もう荷物はまとめる時期になってる。
ここでこれ以上草太を困らせても仕方ない。
兎に角このテラスハウスを出ることを最優先に考えることにした。
おそらく僕が手伝わないと雄介と草太だけでは毎日の生活が立ち行かなくなるだろう。
悩んでいても引越しの日は訪れる。
この後一ヶ月ほどしたら取り壊すから掃除はしなくて大丈夫だと言われたけど、二人で暮らした大切な三年間。
思い出を心に閉じ込めるように僕はなるべく丁寧に拭き掃除を終えた。
草太は先にトラックに同乗して行ったので、今日は僕一人でここの鍵をかけてサヨナラをする。
二人できちんと挨拶をしたかったなと思いながらまだ二軒引っ越していないお宅に挨拶に行った。
一軒めは年配のご夫婦で、奥さんにはおかずをおすそ分けしてもらったりした。名残惜しそうにしてくれるご夫婦と挨拶を交わした後。残り一軒は原田さんの家だった。
薄曇りの空、雲の合間から夕陽が差し込む舗道に落ちる僕の影は、細くぎこちなく僕の横に付いてくる。
舗石に映るその頼りのない影はこれからの季節、恋人の影と寄り添い重なって行けるのだろうか。
小さな影と大きな影、そこに僕は居ても良いの?
その答えを
原田さんに求めそうな、
僕はずるい……
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夢咲まゆさん 企画に参加しました、子持ちBL
" 映る影 "は、
10000字近くになりましたので、
ここで一旦終わります。
読んで頂きまして本当にありがとうございました。
この後は
やはり企画に参加させていただき、子育てBL
" 掬ぶ影 "を
この後直ぐに連載いたします。
勿論、続きです。
読んでいただければ嬉しいです。
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