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第9話 梅雨はすぐそこに 三

梅雨はすぐそこに 三 僕の顔を見た原田さんは、ふっと微笑んだ。 「 今夜はダメそうだね 。また、 誘います 」 誘いますという最後に足した一言を告げる時に僕の頰を掌でそっと触った原田さんの眼を僕は呆然と見上げてしまった。 「 さぁ 」 と軽く掴んだ僕の肩を舗道に押しやると、 「 彼が待ってるよ…… おやすみなさい 」 という言葉で玄関ドアは閉められた。 その音を聞いた僕はどうしたんだろう、一人置き去りにされたような気分に襲われた。 目の前のドアは閉められた。ならば行くのはもう一つのドア。 背後では草太が玄関ドアから半歩出てこちらを見ているのがわかっているのに、脚がなかなか一歩を踏めない。 「 馳 」 闇に響いて入った音が耳にこもった…… よく眠れなかった翌朝は、二度寝してしまったのが災いして押した時間で慌ただしく家を出る。 早退するという草太は何本か前の電車に乗ったらしい。 こんな些細な日常のすれ違いが僕の月曜日の朝を重くする。 しっかりしなきゃ、雄介の事を一番に僕らは考えなきゃならない。 僕にだって何かはできるはず。 雄介を可愛く思っている気持ちに、 嘘はない。 待ち受けにした、このテラスハウスの人たちとバーベーキューした時の集合写真。 雄介を抱いた僕と横の草太が小さく写っている。 そのスマホをギュッと握りしめた。

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