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第8話 梅雨はすぐそこに 二
一瞬、三軒隣にいる草太の事を思った。
そして、僕は初めて原田さんが草太と同じ性を持つ若い男だと気がついたんだ。
僕が一緒に住んでいるのは、恋人で、それも男。
原田さんはどんな気持ちで僕らを見てるんだろう。
今までの良き隣人だった普通の距離が急に暑くてモヤモヤとしたものに包まれた。
「 馳さん?」
「 あ、あの……」
ふっと笑った原田さんが低めた声は静かなテラスハウスの玄関を別の空間にする。
「 前から話したいと思ってた。何かあったの?話し相手は僕じゃダメですか?」
何かがカラリと音を立てた。
近づいちゃいけない、という気持ちと、部屋に上がったってこの関係は変わらない、という気持ち。
どっちの気持ちに蓋をすれば良い?
不自然なその距離と不自然なその時。
「 馳 」
と草太が僕を呼ぶ声が背中から聞こえてくる。
なんで?今なんだろ
一番嫌な時に一番ダメなことが起きる。
僕の予感は当たるんだ。
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