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Ⅰ:1

 美男美女な両親が離婚したのは、俺が幼稚園の頃。  くるんくるんの赤毛に腫れぼったい目、低い鼻、まだ幼くて肌理細かいそこに点々と浮かぶソバカス。  『俺の子じゃない』と言い張った父親は、簡単に母親も俺も捨て家を出て行った。  当然母親の怒りは俺に向いて、殴る蹴るの暴力が当たり前になった。だが、それでも生きる為にはその母親の側を離れるわけにはいかなかった。  そんな母親とは案外長い付き合いになったが、2ヶ月程前。遂にその関係が切れた。母は漸く極貧生活から連れ出してくれるナイトを見つけた様だ。  それは俺が二十歳になって、数ヶ月が過ぎた日の事だった。  中卒。  それは例え未成年を脱していたとしても職にあり付くには厳しい学歴だ。  その上俺は中学すらマトモに通ってなかったもんだから、学がなくても受け容れてくれる寛大な場所さえも俺を弾き出した。  簡単な足し算ですら躓くからバイトは直ぐにクビになるし、仕事が無いから当然金は無く、よれよれと家に戻れば家賃滞納で既に追い出された後だった。  借金が無かったのが唯一の救いか。  しかしそれでも生きていくには不十分で…このご時世に行き倒れなんてものを経験したのは、今から1ヶ月前のことだった。  そんな俺は今、何故かそのままくたばる事もなく小さめのマンション一棟を貸し切った一室にて、良く分からない仕事をしている。

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