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Ⅱ:終
「ぁ…あっ、や、あ…数馬さっ、ぁ」
全身に広がった波紋は治まることなく拡がり続け、僅かに触れられるだけでもイッてしまうかと思った。
数馬さんが俺に与えるものはすべて特別だ。
それは“快楽”だって同じことで、先程の機械的に感じていたものとは雲泥の差だった。
「あっ、あ…んっ、ぅあっ、あ、」
着たままのシャツの下で男らしい指が胸の突起を捏ねては押し潰しを繰り返し、もう片方の手は厭らしく脇腹と腰骨を滑ったかと思うと、あっという間に指を尻の間に差し込んだ。
「ぃあ"ッ!!」
「ぐっちゅぐちゅだな」
「あぐっ! あっぃやだっ、あ! へんっ、変ッ!」
「何が」
数馬さんの指が入っただけで、頭が可笑しくなるかと思う程の痺れが全身に走った。
指だけでそうなったのだ。
数馬さんの昂りが差し込まれた瞬間、俺は痛みよりも先にその熱さで眩暈を起こし、気付けば絶頂していた。
それを見た数馬さんが楽しげに声を漏らす。
素質が有るとか、とんでもない淫乱だとか、耳元で沢山詰られた。
でも、ドロドロに溶かされた頭の中はそれすらも快楽へと摩り替えてしまう。
揺さぶられながら口の中も遊ばれて、痛いのに気持ちよくてどうしようもなかった。
痛みしか知らない俺はそれが怖くて仕方ないのに、目の前にある細身に見えるがその実逞しい数馬さんの体にしがみ付けば、そんな恐怖も簡単にどこかへ飛んだ。
もうダメだ。
俺はもうアンタ無しでは生きられない。
親すら見向きもしない、不出来な容姿を小汚く雨に濡らした俺に、アンタは躊躇いも無く綺麗なその手を差し出した。
あの日のあの瞬間、俺は二度と出られぬ檻に捕まってしまったんだ。
口から飲み込めなかった唾液を溢れさせ永遠に喘ぐ。その声が女の様には可愛くないとか、顔を隠さないと萎えるんじゃないかとか、そんな細かいことを考えていられなかった。
目の前の仕立ての良いスーツに皺をつけたい。
ただ、乱れさせたい。
「数馬さっ…ことしか、考えっ、らんねっ、あっ、あ! ぁあッ!」
中で更に容量を増した数馬さんを、絶対に逃すまいとばかりに締め付け、俺はそれを気を失うまで永遠と貪った。
その後、俺は再び数馬さんよりプラス一週間の謹慎を言い渡され、その間、今度こそ本当に誰も俺の部屋に近寄る事はなかった。
来るのは食事を用意したマネージャーが日に3回と、夜中にやって来る数馬さんのみ。
数馬さんは謹慎で有ろうが無かろうが、この日を境に俺のカラダを好きなだけ喰う様になった。前は週に2、3回ほどだった来訪も今ではほぼ毎日だ。その都度俺を喰うのだから、喰われるのもほぼ毎日って事だ。
そのせいなのか何なのか、最近では数馬さんを見ただけでカラダの奥が疼いてしまう。
だが、そこに不満は一つもない。
数馬さんが望むものこそが、俺の望みだからだ。
後にユキは、この日のことを『地獄だった』と同僚に語る。
それを聞いた同僚たちは皆一様にユキを憐れんだが、その中の誰一人としてユキの言う本当の“地獄”を理解してはいなかった。
「どうしよう……僕、糸くんであんなにイッちゃった…ううぅ…」
数馬の取ったユキへの仕置きは、減給や謹慎以上に重いものとなった様だ。
第二章:END
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