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Ⅱ:7
「何でそうしようと思った?」
未だ髪は掴まれたままだが、その手の力が緩み少しだけホッとする。
「俺は頭悪いし、こんな見た目だから客も取れねぇし、役に立たない。けど、数馬さんは…その、」
「ん?」
「夜…俺を抱えて寝るから、あの…俺とヤりたいのかと、思って」
俺がそう言うと、真ん前にある数馬さんの顔がきょとんとする。いつも無表情な顔がそれ以外をするのは珍しい事なのに、
「っ、く……くくっ」
何かを堪える様に喉を震わせたかと思うと、なんとその後すぐ、数馬さんは声を上げて笑い始めた。
まだ付き合いの短い俺にだってこれが異常事態だと分かるんだ、ユッキーなんて目ん玉が飛び出るほど目を見開いていた。
「お前はバカでアホでどうしようもないが、勘だけは鋭いな」
「え?」
「ヤりてぇよ、糸ん中に入りてぇ…つったらお前、俺を中に入れんのか?」
俺は聞かれた事を頭の中で復唱すると、一回だけ首を縦に振る。そうしながら数馬さんの俺への呼び方が“テメェ”から“お前”に変わった事を嬉しく思った。
数馬さんの機嫌が少しだけ直ってる。彼は、キレてる時だけ俺を“テメェ”と呼ぶから。
「あっそ。じゃあ俺を見ただけで勃起する様なド淫乱にしたいっつっても、お前はそうなろうとすんのか?」
「……どうすれば“そう”なるのか分かんねぇけど、それで数馬さんが喜ぶなら、俺はそうなる努力をするよ」
数馬さんがまた笑った。
親指を口の端から差し込まれたかと思うと、そのまま数馬さんの唇が俺に重なった。その瞬間、あの日感じた衝撃が全身に走り波紋を広げる。
口内に侵入してきたぬるりとしたものが数馬さんの舌だと気付いた時には、既に俺の舌は絡みとられ遊ばれていた。
それは俺が酸欠でぐったりするまで続けられ、漸く唇が離れた時にはもう、俺の意識は有って無い様なものだった。
数馬さんが俺から目を離すことなく言葉を紡ぐ。
「ユキ、減給も謹慎も免除してやる。その代わり終わるまでそこで見てろ。あと、それを直ぐに消せ」
聞こえねぇ、と言う数馬さんに、何が、と聞き返すことなくユッキーはテレビを消した。
それと同時に動き始めた数馬さんに再び口内を蹂躙されたあと、それは首筋を通り鎖骨を噛み、点々と赤い痕を残していった。
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