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第52話
結局彩葉が帰ってきたのは、日付の変わる数分前。疲れた様子でスーツを脱ぐのも諦めて廊下に倒れるように寝転んでいる。
「彩葉ダメだよ、ここで寝たら風邪ひくから」
「······面倒臭い」
「ほら、手伝うからスーツ脱ごう」
「······引き摺っていいから、向こうに連れてけ」
面倒臭がりにも程があると思う。きっとこの様子じゃ彩葉の少し長い髪も面倒臭いから切ってないんだろう。それが似合ってるからいいんだけど。
「引き摺ってなんていけないから、自分の足で歩いて」
「ならここでいい」
「もう!」
仕方なく彩葉を抱き上げてソファに落とすように置いた。「痛い」と文句を言ってきたけど気にしない。
「スーツを脱ぎなさい!」
「······引っ張って」
万歳のポーズをとった彩葉。溜息を吐き、袖の部分を引っ張ってジャケットを脱がせた。
「今日そんなに大変だったの?」
「······まずは速水の説教から始まった」
「それは大変だ。お疲れ様」
ベルトを外し、スラックスを脱がせる。
スーツはハンガーにかけて、さて今度は風呂だな。とネクタイを解き、Yシャツのボタンを外す。
「何?······風呂?」
「うん。連れて行くから入って。疲れてるなら余計にね」
「セックスすんのかと思った」
「誰がこんなに疲れてる恋人相手に発情するのさ」
「······お前?」
「馬鹿。早く立って」
ケラケラ笑ってゆっくりと立ち上がりお風呂場に向かった彩葉は、何故か下着だけ履いた姿で戻ってきた。
「秀、着替え忘れた」
「持って行くよ」
「悪い」
電気のしたで見た彩葉の体は改めて、程よく筋肉がついていて、妖艶だなと思った。
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