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4月、始まりの春
「やだー!どう考えても無理!先生に言って変えてもらう!」
「バカか!やめろ、マジでやめろ。部屋の交代は厳禁て言われたの忘れたのか?」
「俺の顔面をフルに活かしてもダメかな」
「先生みんな男じゃん。いくらお前でも同性相手じゃ無理だろ…」
「えええ智ちゃぁん」
まだ今のようにお互い男子校の波にのまれていなかった16歳を迎える年の春。
同性相手に芸能人レベルのイケメンフェイスを持つ律がアプローチをしかけても、どうせ無意味に終わると信じて疑わなかった純真無垢な頃だ。
入学式の前に、荷物だけ先に寮に運び込もうと、お互いで話し合って決めた。
家具や家電は備え付けということだったので俺たちは生活用品や衣服、教材など持てるものを全て持って管理人室のドアを叩いたのが1時間前。
寮母さんならぬ寮父さん的な存在の管理人さんに寮生活のルールについて軽く説明を受けたのが細かく刻んで45分前。
学校が始まったら先生から詳しく説明があると思いますと言われ、お互いの部屋番号が書かれている鍵を渡されたのが30分前。
俺は多分こうなるだろうと予想していたので、大した驚きもなく受け取った律と部屋番号の違う鍵を持って管理人室を出たのが、つい先ほどの話だ。
エレベーターの暗黙のルールなんてのも当然知らなかったので、エレベーターで3階に向かっている時に冒頭の律のウダウダタイムが始まった。
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