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「だから、ビッチってどういう意味だよ」
「だからっ、それは、あれだっっ……そういうトコがビッチだって言うんだよ!」
「もう、全然わかんねえよ。そもそも何の用があってここに連れてきたんだ。何もないならオレ帰っていいかな?」
「だから!」
呉がオレの手にある空き缶をサッと取り上げ、机に置いた。
「あ、コーヒーありがと。じゃ、オレ帰っていいかな」
「ダメに決まってんだろ。お前、見かけこんなしょぼいくせにほんと小悪魔だな」
「な………」
ワケのわからないことを言われ続けてイライラしていたけど、『見かけしょぼい』は、本当にその通りすぎて突き刺さった。
誰に言われてもショックだけど、呉みたいに派手でスクールカースト上位の奴にそんなこと言われたら、ほんと……。
「……」
我慢しろ。我慢だ。
ダメだ。下唇がブルブル震える。まぶたも熱いし。
さっと下を向いたら呉が追い討ちをかけてきた。
「何だよ泣いたフリか?」
「……も、オレ帰る」
声が震えた。
呉から目をそらし、さっと立ち上がってドアに直進。
「え、ちょ、待て、え?マジで?三次 、本当に泣いてる?」
ノブに手をかけたところで後ろから羽交い締めにされ、暴れはしたものの、ふたまわり大きい呉に抱え上げられベッドに引き戻された。
背後から拘束され、呉の足の間に座らせられる。
「三次 マジで泣いてんの?」
「うるさい。泣いてない」
ギリギリ泣かずに済んだけど、簡単に引き戻されて、また泣きそうだ。
「え、ごめん。ごめんな?えーっと、三次はしょぼくないぞ。全然しょぼくない」
「ウソつけ」
横から顔を覗き込まれてプイッと反対を向いた。
するとそちら側に回り込んで呉が覗き込む。
「いや、むしろ素朴で可愛いんじゃないか?うん、俺はいいと思うぞ?」
「ウソだ。絶対、ウソだ」
それに可愛いなんて、ガキっぽいって馬鹿にされてるようにしか思えない。
必死で呉の腕から抜け出そうとするけど、長い腕に器用に封じられて全然抜け出せない。
「ほんと、可愛いって」
耳元で囁かれ、頬に湿って暖かい感触と、チュッという音。
え……?
緊張で体が固まった。
「俺が悪かったから、帰るなんて言うなよ。三次が『また明日』って言ったんだろ?ほんと、反省してるから、昨日の約束守れよ、な?」
「……約束?なんかしたっけ?」
「そんなこと言うなって。ほんと悪かった。三次は可愛いよ。もうしょぼいなんて言わない。だから……な?」
チュ……。
また、呉の厚い唇で頬にキスをされてしまった。
その途端、ドドドドド……と、心音が早くなる。
顔の側にある、呉の綺麗な切れ長の目。
頬に体温を感じるくらいだから当然だけど……近い。
そっちに気を取られていると、反対からオレのアゴに手が伸び、さらに呉の方に顔を向けられ………。
「んぷっっ……!」
キス……。
って言うか……あうっ……あうっっ………。
せわしなくなんども唇を合わせて、角度を変えられ……。
「はぁっ……三次……」
舌をねじ込まれ、唇を噛まれて……。
え?え?これキス……?だよな?なんか、こんな慌ただしいもの?
呉はすげえハァハァ言ってるし、オレはハァハァいう暇もない。
そもそも、何で?
何で?何で????
ああ、もう、口の中舐めるなよ。クチュクチュいうのが恥ずかしい。
「ちょ、も……呉 」
「ん……?何、もっと欲しいの?」
ええ?違う、違う……!そっちの『くれ』じゃない!
「んぷ……んぷ!」
「気持ち良さそうに喘いでんな」
違う……断じて違う!
「んーー!んーぷ、もっと、優しくしろよ!」
あ、そういう事を言いたいんじゃなかった。
「わかってるって、ビッチちゃんは本当は激しいのが好きなんだろ?」
しかも全然わかってない。
ああああああ、またぺろぺろクチュクチュ……。
うう……。
……長い。
まだ?
まだ?????
はぁ、呉、嬉しそうだな。
キスだけじゃなく、ずーっとオレの背中や腰をなでてくる。
ものすごくドキドキはしてるんだけど、なんかもう長すぎて、だんだん他人事みたいな気分になってきた。
しかもキスするために斜め上を向かされてるから、首が疲れてきたよ。
オレは、ちょっとでも楽をしようと、こっそり、こっそり体を下にずらしていった。
最終的に仰向けに寝転んでしまえば、首も楽なんじゃないかって、そんな浅知恵。
「三次……可愛い」
「ん……」
はいはい、ありがとう、ありがとう。
はぁ、いつまで続くんだよ。
ドキドキしすぎて、ぼーっとなってきた。
少なくとも10分以上はしてるよな?下手すりゃ30分くらいしてないか?
でも呉もちょっと疲れてきたのか、少しゆっくりネットリしてきたし。
唇を優しく舐められると、ちょっと甘い痺れがきて……。
このくらいの優しいキスなら悪くないかも。
……やばい。完全に慣らされてる。
じわりじわりと逃げないと。
ベッドの端から床にずり下がって、控えめに逃げるオレを、引き上げようと呉が制服のシャツを引っ張った。
けど、裾が抜けただけで、オレはさらに下がっていく。
ズルッと一気に床に落ちそうになって、ようやく呉がキスをやめた。
そしてオレをベッドにグッと引き上げる。けど、座ればまたキスが始まりそうな気がして、オレは横を向いてベッドに寝転んだ。
少し、休憩させてくれ。
……と思ったのに、呉がオレに覆いかぶさって、またキス。
それを反対を向いて逃げる。追って来るのをまた反対を向いて逃げる。
「なんで逃げるんだよ」
「なんでそんなにキスするんだよ。もう……キス疲れた」
「………やっぱり貪欲だな」
そもそもなんで呉はオレにキスしてるんだ。
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