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「そうだ。オレも一つおまじない知ってるんだ。それ、呉に試していい?」 ……なんて今考えたんだけど。 「検証か?いいぞ」 「最初に、まぶたにキスするんだ」 オレは呉のまぶたに唇でふれた後、鼻先にもチュッと唇をふれさせた。 「鼻にキスしてから、キスすると……」 呉の首に腕を回して、チュチュチュ……と軽くキス。 そしてじっと目を見つめる。 「これは、相手から『好き』って言ってもらえるおまじない。なぁ、呉、オレのこと……す、好き?」 ダメだ。言いながら恥ずかしくなってきた。 顔が……熱いっっ。 「っっ…………か、か、可愛いいいいいいっっっっ!!!!!」 呉がオレをぎゅっと抱きしめベッドに転がる。 「こ、こら、そうじゃなくて、おまじない効いたのかよ?オレのこと好き?」 「効きまくりだっっ!!!」 呉は痛いくらいにオレを抱いて、何度も何度もキスを散らした。 あーもうっ! 好きって言ってくれないし、全然効いてないじゃないか。 ……あれ?まぶた、鼻先、唇にキスって……これ……。 呉が両手でオレの顔を優しく挟んで、親指で頬をなでる。 視界いっぱいに呉の凛々しい顔。 「赤穂(あきほ)、俺のこと……好き?」 ニコッと微笑んで……ああ、こんな笑顔、初めて見た。 「はぁ……最低なのに……。やっぱ……好きかも」 あっ……しまった。 「まあ、知ってたけどな」 「くっっ。ムカつく!」 「それでも好きだろ?」 「はぁっっ?さっきのは『好きって言ってくれるおまじない』であって、『好きになるおまじない』じゃないから!」 ……なに小学生みたいなこと言ってんだオレ。 「でも、好きだろ?」 「な、なんでそんな自信たっぷりなんだよ。えーっと、消しゴムのおまじないの効果で好きなだけだから、ちゃんと惚れさせないと、すぐに効果が切れちゃうぞ」 ……ああ、ほんと、何言ってんだ。 「なっ……てめ、淫乱ビッチじゃねぇって言ってたくせに、やっぱり移り気なのか。 「だ、だから、オレがいつまでも呉を好きでい続けるように……や、優しくしろよ」 「くっっっ……か、可愛い顔すんなって……!わかった。優しく……シテ欲しいんだな?」 ………あれ? え……? 腹に擦り付けられる呉のモノがムクムクと……。 「ちょ、どんだけ絶倫なんだよ。いや、時間的にも帰らないとまずいし、今日はもうしないから、また今度!」 オレはベッドから飛び降り、急いで服に手を伸ばした。 「っっっ…… 次のセックスの約束かよ!ビッチじゃなくても、顔に似合わぬスケベ好きってとこだけは譲らねぇんだな。わかった。いつする?明日?明後日ならもっとゆっくりできるけど」 ああ、オレはまた余計な事を言ったらしい。 けど、呉を好きだって自覚してしまったから、拒みづらい。 「つ、次のエッチは、呉がしょ、少女漫画みたいな感じでオレに好きだって告白して、ちゃんと交際申し込んでくれたらする」 呉がキョトンとしてる。 「少女漫画……ってどんなだよ?」 「それは……調べれば分かるだろ。た、楽しみにしてるから」 ………てか、オレもどんなか知らない。 外はもう真っ暗だ。 呉の家の人も帰ってくるだろうし、オレも早く帰らないと。 オレはそのまま慌ただしく身支度を整えた。 そして帰り際にも、オレの頭をなでる呉に、まぶたと鼻先と唇にチュッチュッチュッとキスをして、好きって言葉をねだられてしまった。 ……自分で捏造したおまじないだからな。 オレはしょうがなく、小さな小さな声で『好き』って言ってやった。 くそっ。嬉しそうな顔しやがって。 ……早く呉もオレに好きって言ってくれないかな。 そもそも呉に少女漫画みたいに告白しろって言ったのは、あいつがおまじないとか言い出したからだ。 怖いオラオラな呉に強制連行されるという酷い始まりを無かったことにして、どんなだかはよくわかんないけど、少女漫画みたいなキラキラな始まりに変えて欲しいって思ってしまった。 素敵イケメンぶった呉が、少女漫画じゃ絶対モブキャラなオレを口説くとか……笑える。 けど、ついキュンキュンしちゃったりするのかな……オレ。 さっきのキスする呉の顔を思い出しながら……『好きだよ』って言われてるところを想像するだけで……。 は………はぁ……やばい。 想像だけなのに。やばい。 王子様ぶった呉にそんなこと言われたら、マジでメロッメロになってしまうかもしれない……。

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