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呉は写真集を見せながら、すぐにオレにキスしてきたり、ちょっと興奮して背中にチンコすりつけたり……。 色々なことが有耶無耶なままだけど、オレもつい、イチャイチャとした時間を楽しんでしまった。 いや、途中から大きな手で胸や腹をなでられながらのキスに、写真集そっちのけでポーッとなってた。 「呉、そろそちゃんと教えてくれよ。なんでオレにこんな事したんだ?」 答えはわかってるけど、言わせたい。 オレがいろんな男とヤリまくってるって思い込んで、それをやめさせるために呉がオレの相手しようとしたって事は、当然、呉はオレのコト……。 「ああん?三次、俺の事好きだろ?だからいんじゃね?」 「はぁっっ?なんだそれっっ!」 バッと振り返ると、呉は自信たっぷりに微笑んでる。 「なんだよ。お前結構怒りっぽいな」 「お、オレが呉を好きって、逆だろ!? てか、呉は自分に気があると思ったら誰でもこんな事するのかよ!」 「んなわけねぇ。ただお前がしょっちゅう俺の事見てくるし?絶対好きだろ」 ……見てたの、バレてる。 「さ…………さぁ?」 「さぁってなんだよ!お前……ああ、チクショウ、これだから小悪魔ビッチは!やっぱり、ヤれそうな男なら誰でも股開くのか!」 「だからビッチじゃないから!こんな事初めてだし!」 「ウソつけ。こっちは緊張しまくってたっていうのに、手馴れ過ぎなんだよ!」 「……緊張?」 「………」 え、緊張って、あんな無茶苦茶して、よくそんな事……。 いや、緊張してたから無茶苦茶だったのか?で、緊張してたからビンビンなのに芯なしフニャチンだった? 「と、とにかくテメェみてぇなサセ子には騙されねぇ。ああ、もう、そのニャンコな三白眼で睨むのやめろ。可愛いって自覚ありありであざといんだよ!」 いや、自覚無し無しだよ。むしろ目つき悪いって親に注意されて気にしてるんだから。 「でもお前は俺に惚れてる。間違いない」 「なんで……そう言い切れるんだよ」 確かに呉のことは気になってたけど、自分でも好きかどうかわかんなかったのに。 「おう。小学生の頃にな、女子に恋のおまじないを聞いたんだ。非科学的でバカバカしいって思ってたんだけど、それと同じ内容が本にも載ってたんだよ」 「………え?」 なんの話? 「なんだそのバカにしたような目。まあ、聞け。俺もそんなもん鵜呑みにしたりはしねぇ。けどその一年後くらいに別の女子から同じおまじないの話を聞いたんだ」 「……それで?」 「さらに、だ。先日、小学生の従姉妹が同じおまじないの話をしてきた」 「……うん??」 「ガキだった小学生の俺はおまじないなんか非科学的だって一刀両断にしてたけど、科学ってのは事象を検証&仮説を証明することだろ?検証せずに非科学的だと言うこと自体が非科学的なんだ。『科学で証明されてない』ってよく言うけど、それは検証し証明した人がいないだけって場合がほとんどで、科学で証明されてないからって事象がなかったことにもならない」 「う………うん?????」 なんだか呉が小難しいことを言い出した……。 「複数の人間が同じことを言うってことは、そこに一定の根拠があるのかもしれない、検証をする価値があると考えるのは、まあ、当然の流れだろ?」 「……うーん」 そう言えば呉って結構成績良かったような……。 「そこで俺は『新品の消しゴムに好きな人の名前を書き、カバーで隠して誰にもさわらせずに使い切る』というのを試したんだ。普通に使ってたらかなりかかるから、必死で漢字の書き取りしては消して、2日で使い切ってやったんだぞ」 「………ううーん?」 「まあ、結果は言わなくてもわかるだろうが、三次は俺のことを気にしてチラ見し始め、俺の気をひくために聞こえるような場所でエロトークを展開しては、ビッチな生態を知らしめて煽り、すっかり俺に惚れてムラムラが我慢できなくなったあげく、本屋で待ち伏せして、露骨に誘ってきたと言うわけだ」 「……チラ見以外は身に覚えがないんだけど」 「ああ、本人が無自覚でやってしまうのがおまじないの効力ってことだろうな」 「それ、いつやったんだ?」 「一週間くらい前だ」 オレはそれより前から呉をチラ見してたし、大竹はエロネタでオレをいじってた。 やっぱり100%呉の思い込みだ。 「……あれっっ?いや、百歩譲って、本当にオレがおまじないのせいで無自覚に呉を誘惑したんだとしてさ、呉はなんでオレの名前を書いたんだ?」 「え……それは。……さ、さあ?」 呉が口をヒクヒクさせて横を向いた。 「はぁ?『さあ?』って、それ好きな人を振り向かせるおまじないだろ?」 「えーっと、どうだったかな」 「なんだそれ!好きでもないオレをその気にさせて弄んでやろうってことか?」 「え……いや、違う……!」 「違うって、どう違うんだよ」 オレは体ごと振り返って、呉と向き合った。 その気にさせて弄ぶつもりじゃないってことは、つまりオレを好きだってことだよな。 目を覗き込むけど、サッとそらされる。 けど、まゆ根が寄って頬は赤いし、間違いなく照れてる。 「呉は、オレがすぐにヤらせるビッチだって思ってるみたいだけどさ、なんで大竹が言った『淫乱だ』っていう冗談を信じるのに、オレの『ビッチじゃない』って言葉を信じないんだ。ビッチビッチ言われるのすげぇムカつく。そんなにオレが嫌いなのか?」 「え……」 ほら『違う。好きだ』って言えよ。 ここぞとばかりに呉を見上げる。 絶対目つき悪いだろうな。でも上目遣いがこいつのツボらしいからな。 「いや、ごめん。三次のこと嫌いじゃないから」 そうじゃないだろ。好きだって言えよ。 そしたらこんな無茶苦茶したことだって……ある程度は許してやるから。 「嫌いじゃないなら……なに?オレをどうしたいんだよ。ヤれたらもうそれでもう満足?もうバイバイ?」 「いや、なんでだよ!お前やっぱビッチか!」 「またビッチって言った!」 ムッとして思わず頬を膨らませてしまった。 「あ、ごめん、ごめん。三次はビッチじゃなくて、ただエロいだけだ」 ……こ、この野郎……。 けど、ガキ丸出しなオレに呉がエロさを感じるってことが貴重な気もして、強く怒れない。 「嫌いじゃないけど、好きでもないのにエロく見えたから手を出したんだ?それってひどくない?オレ、すげえ傷ついた」 「い、いや、好きじゃないわけじゃない……」 「じゃあ、なに?オレのことどう思ってんの」 「だ、だから、あれだよ……その……可愛いなって……」 呉……。何が何でも好きって言わないつもりか?

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