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Ⅰ章 在りし日の歌⑥
「先輩が悪い事するから、いけないんですよ」
悪い事?
俺が何をした?
「Ωなのにβだって偽ってるでしょ。
……大学のパソコン、ハッキングしたの知ってんだよ」
言ってなかったけど
「この大学の管理責任あるんだ。俺……」
理事長の息子
「理事長代行だから」
菫の眼が揺れ蠢いた。
「俺の組んだ完璧なセキュリティで、生徒データを改竄 するなんて有り得ない。
ようやく辿り着いた犯人は、お前だった。
あんな事さえしなければ、俺達に接点なんて未来永劫、訪れなかったのに」
フッと口許に伝った吐息が笑う。
「精液レポートは俺の罠だよ。お前に近づくため、理事長代行権限を執行した」
「そんなっ」
上手く紡げない呼吸のさ中、菫の眼を睨む。
「怖い顔するなよ。今も理事長代行権限を使ってるから、保健室には誰も近づけない。
俺と先輩の二人きり♪」
「ふざけんなッ」
「怒った顔もそそるね、先輩。つか、ふざけたマネを最初にしたのは、先輩の方だし」
「……改竄は、俺がΩだと知られたくなくて」
「いいよ、怒ってない。こうして先輩を……」
否
「ナミを手に入れる事ができたんだから」
獰猛なキスが唇をこじ開けた。
「今は本気でナミが好き」
俺を、お前が?
「うそ」
「じゃあ、今から信じさせてあげる」
指が引き抜かれて、入口に膨張した固い熱が押し当てられる。
「精液分析で知ってると思うけど。俺の精子の数と運動量はα並じゃなくって、αだ。
発情期じゃなくても孕ませる自信あるから」
「ハヒアァアァァアーッ!」
剛直がメリメリと蕾を押し開く。
壊れてしまう。
「息吐いて、ナミ。俺と一つに繋がったのを感じて」
俺の中で動いてるっ。
熱が大きくなってる。
体が熱くて溶けそう。
「子供を作ろう」
α×Ωで『番 』って言うんだっけ
激しい律動が俺を求める。
意識が真っ白に染まる。
「……俺達、夫婦になるんだよ」
俺はイザナギ
お前の雄 で、運命のα
ズルイ夫の名前、覚えといて………
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