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Ⅱ章 カケラの存在
………なんでっ
キュッとシーツを握った。
あれから…………
幾夜も幾夜も待った。
どれだけ雨が降ったろう
幾つの星が降ったろう
月は今、欠けているのだろうか……
夜
上弦の月ならば満ちないでくれと願う。
アァ、そうなんだ。
ようやく気づいた。
単純明解だ。この答えは……
俺は、あいつの子を提供した
元々そういう約束だったじゃないか?
精液の対価報酬を渡す……
子供が産まれたら、俺は要らない。
契約終了
期間限定夫婦だったんだ、俺達は。
………じゃあ、なんでっ!
身籠った後も、毎夜俺を求めてくれたんだッ
そんな夫婦の真似事なんか要らなかった!
こんなに苦しくて……
胸が押し潰される夜を背負うくらいなら……
「………………ナギ」
お前の体温を想いながら、昂った熱塊に手を伸ばしたら涙がこぼれた。
明日、この家を出よう。
寮に戻って、お前と出逢う前の日常を取り戻すよ。
そろそろ大学にも行かないとな。
一度くらいは
俺とお前の子、抱きたかったな……
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