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第1話 春 -1-
教室の廊下側の席はドアの開閉が多いせいか、どこか寒い……。
そんな俺、『逢葉 三葵』の席は廊下側一列目の一番前。
一番前と最後の席は最もドアに近いから、春の始めという季節柄か常にヒンヤリとした空気を纏っている。
そしてこんな席に座る俺に、幼馴染イケメン『倉房 壱弥』が隣りの教室から休み時間ごと通ってきてくれてる。
そういう点では、この席を……俺はまあまあ気に入っている。
壱弥と話し易いし、第一、壱弥も話し掛け易いと思うんだ。
現にほら……
「……三葵、寒い?」
「うん……」
「昼飯、"あそこ"行くか?」
「……うん! 俺ね、新作の菓子買ってきたんだ! 壱弥、あそこで食べよう?」
俺は彼の誘いに早速カバンから昼用に買ったパンとジュースとお菓子が入った袋を取り出し、教室を出た。
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