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第1話

俺の名前は森野涼音(もりのすずね)。父親は外科医で、母親は看護師だ。と言っても、本当の親ではない。俺の本当の両親は、俺を一人置いて死んでいった。 母親は、俺を産んですぐに亡くなった。出産時に出血が止まらずに亡くなったと父親に聞いた何度も何度も…。繰り返し「お前さえ居なければ香織は死ななかったんだ」と。香織というのは母の名前だと気づくまで長くはかからなかった。俺は要らない子なのだと、ずっと聞かされていた。 小学校に上がるころ、父親は限界を迎えたのだろう…。俺の誕生日の朝、リビングで首を吊って死んでいた…。 机の上に遺書があり、俺宛の手紙もあった。そこには一言、「すまない」と書いてあった。何に謝っていたのか、俺は今でも分からない。 母親を死なせてしまったことか、それとも俺を作ってしまったことなのか……。 父親が自殺したことにより、俺は施設に入った母方の親戚も父方の親戚も、俺のことを見て言うんだ。「お前さえ、生まれなければ…」って 俺はそんなに不必要存在なのかな。なんて、 悲観するほど馬鹿ではなかった。寂しさも悲しさも俺の中には存在していなかった。

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