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 おそらく唇は真っ青になっているだろう。  その唇から出た言葉は震えている。けれどその震えは寒いからだけではない。谷嶋にはけっして通じない想いがあるからだ。 「匡也さんは酷い。貴方を想っているのに……身請けしてくれて嬉しかったのに……なのに、俺を抱いてくれないどころか寝屋も別で、しかもお嫁さんを迎えるなんてっ!! ずっとずっと想い続けて、側にいられると思って……それなのに、俺を捨てようともしないなんて!! 俺がどんなに貴方を想っているのか知らないでしょう? 死にたい、死なせてよ、俺はもう貴方なしじゃ生きられないっ!!」  涙が頬を伝い、春菊の悲しみが胸に広がる。  この想いを知られたのだ。もう側に居ることすらできないだろう。  春菊はやがて去って行く彼から視線を外し、ただ地面に項垂れ、嗚咽とともに涙を流す。  こうして自分はひとりで生きていくのだと、そう思った。だが、その考えは外れる。  春菊の身体は突然冷たい地面から浮いた。 「本当に? それは本当かい?」  尋ねてきた声は春菊と同じように震えている。腰に回された腕の熱を感じて春菊の呼吸が一瞬止まった。 「本当に、君は俺を想ってくれてるのかい?」 「あ、あの……匡也さ……っふ」  突然の出来事に何が起きているのか分からず、谷嶋に尋ねようと口を開けると、すぐに唇が降りてきて塞がれた。 「ん、っぅぅ……」  唇を重ねた先に熱い舌が滑り込み、春菊の口内を蹂躙する。  川の水を浴びた身体は冷え切っているはずなのに、谷嶋から受けた口づけで熱を持つ。

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